ザ・クインテッセンス7月
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96はじめに──なぜ今,歯科医師が睡眠時無呼吸症候群を理解する必要があるのか 家族や親しい友人と温泉にリフレッシュ旅行に出かけたときに,同室者から「いびきがうるさい」とか「夜中に息が止まっていたよ」と指摘され,軽く落ち込んだことのある方はいませんか.いびきを少しかく程度なら病的ではありませんが,夜間に上気道が塞がれ,息が止まってしまう状態を閉塞型睡眠時無呼吸症(Obstructive Sleep Apnea;OSA)といいます.さらに,1時間あたりに10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や1回換気量の50%以下への低下(低呼吸)が何回みられるか(無呼吸低呼吸指数〔Apnea Hypopnea Index;AHI〕といいます)に着目し,AHIが5回以上かつ睡眠分断による日中の眠気を伴う場合,閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syn-drome;OSAS)といいます. よく睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)とも呼ばれますが,OSAやOSASとほぼ同義と考えてよいでしょう.「いくら眠っても寝足りない」,「気付いたらパソコン作業中に居眠りをしていた」,「会議に耐え難く眠くなる」,「重要な案件をディスカッションしようと思っても集中できない」など,OSASに罹患すると頻繁な呼吸停止以外に,これらに代表する特徴的な症状がみられ,仕事や生活に支障を来すようになります.また気分が減退し,抑うつ(うつ)症状が出てくることも指摘されています.さらに厄介なことに,OSASが未治療のまま長引くと,将来的に心脳血管疾患を高率に合併します(図1). さて,なぜ今,歯科医師がOSASを理解する必要があるのでしょうか.確かに過去においてOSASは医科関連トピックでしたが,とくに最近の10年間で「どうやらOSASの病態には歯科的要因が大きく関係し,その治療においても歯科の役割が大きそうだ」ということが次第に明らかとなり,現在では多くの研究者がこの方面での歯科の動向に注目しています.しかし,実際にOSAS医療に従事する歯科医師数はまだまだ少なく,おそらく「医歯連携」という言葉が高いハードルに感じてしまうのが大きな理由でしょう. 意外かもしれませんが,「歯科医師はOSAS医療において十分に貢献できる」という事実を知り,さ第1回なぜいびきや無呼吸は生じるのか?:その理由と症状對木 悟/前田恵子/井上雄一*公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究部/東京医科大学睡眠学講座/睡眠総合ケアクリニック代々木連絡先:*〒151-0053 東京都渋谷区代々木1‐24‐10 TSビル1階Snoring and Obstructive Sleep Apnea for General Dental PractitionersPart1 Why Do I Snore?Satoru Tsuiki, Keiko Maeda, Yuichi Inoueキーワード:いびき,睡眠時無呼吸症候群,上気道,マランパチ分類医科‐歯科連携のスタートに!歯科医院における睡眠時無呼吸症候群の基礎と臨床the Quintessence. Vol.31 No.7/2012̶1500

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