ザ・クインテッセンス7月
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101長期症例に学ぶその治療は果たして適正であったか?はじめに 開業して20年になるが,勤務医時代の治療は残念ながら経過を追えない場合が多い.若い経験不足のころは,それがむしろよかったのかもしれないと思う症例もないとはいえない.しかし,逆に自信のある治療結果の良好なケースは,その後も経過が知りたいと後輩たちに依頼もしてみたが,なかなか長期間は追えないものである.結局,開業してからでなければ,長期症例といわれる定期的にメインテナンスに来院される患者はみることはできないのである.そして,治療後良好と思っていた症例が長期的にみると失敗だったこともある.と思えば,治療はうまくいったが,動機づけが不十分なためにメインテナンスに応じず,数年後に二次う蝕や歯周病が再発し,自分たちが造り上げたものがみるも無惨になって帰ってくることも経験した. インプラント治療は予知性が高いといわれて久しいが,それは本当であろうか? 確かに天然歯の補綴長期症例と比較した場合,二次う蝕や失活歯の歯根破折の心配はない.しかし,ディスインテグレイションやインプラント周囲炎,ポーセレンの破折,対合歯へのダメージなど,問題もでてくるのである.すなわち,天然歯であろうがインプラントであろうが,炎症と力のコントロールがうまくいき,患者との信頼関係が確立している症例が長期成功症例になっていくものと確信している. 究極の長期症例は,天然歯の欠損はおろか,歯質の欠損もなく,歯周病のない,顎位の安定した理想的な歯列と咬合が機能性と審美性を両立させ,永続的に維持されている症例となろう.それでも,加齢のなかで,摩耗・咬耗は避けられず,リシェイピングなどの咬合調整や歯冠補綴の介入が必要となる時期が来る.したがって,歯科医師が装着した,インプラントも含めた義歯やクラウン・ブリッジ,充填物などの多くの人工物は,なおさら治療した責任のなかで真摯に向き合い対応していかなければならない.結局は多くの歯科医師はGPであり,家庭医であり,Brånemarkの「自分がインプラント治療を手LONG-TERM CASES青森県開業 夏堀デンタルクリニック連絡先:〒031‐0072 青森県八戸市城下1‐15‐28Periodontal Prosthesis:Case Report with a 12-year Follow-upReiji Natsubori夏堀礼二歯周補綴後12年経過症例に学ぶキーワード:歯周補綴,長期経過観察,インプラントthe Quintessence. Vol.31 No.7/2012̶1505

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