ザ・クインテッセンス12月
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99遠藤義樹岩手県開業 よしき歯科クリニック連絡先:〒020‐0066 岩手県盛岡市上田1‐3‐10 イースタンキャッスル1F歯科の新しい話題を紹介.はじめに 2004年にわが国の閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAHS:Obstructive Sleep Apnea-Hypopnea Syn-drome)に対する治療での口腔内装置(OA:Oral Ap-pliance)1が歯科で保険適用されてから,医科と歯科の連携が重要視されてきている2.本誌においても「歯科医院における睡眠時無呼吸症候群の基礎と臨床」と題する非常にわかりやすい論文が先月号まで5回にわたり連載され,OSAHS患者に対する歯科医師の対応はほぼ網羅されている. 一般にOAは,1)軽症OSAHSで減量や睡眠時の体位変換による治療が困難な症例,2)中等症から重症OSAHSで経鼻的持続陽圧呼吸(NCPAP:Nasal Continuous Positive Airway Pressure)治療を拒否するか,もしくは継続できない症例,3)耳鼻科的手術が不適切な症例に適応1とされる.その適応を歯科医師だけで判断することはできず,医科・歯科連携での集学的な診査・診断のもとでOA治療が開始され,良好な経過が無作為比較試験において明らか3とされている.一方,諸外国も含めて現在までの報告の多くは有歯顎者を対象としており,局部床義歯もしくは総義歯を必要とするような欠損歯列を有するOSAHS患者への歯科的対応の記述は極端に少ないのが現状である. 日本におけるOSAHS患者は推定240万人,有病率が男性で約4%,女性で約2%とされ,これらのうちの90%以上は未診断/未治療のまま存在する4.OSAHSは習慣性いびき症患者のなかに多く潜み,この習慣性いびき症患者は中高年層の40~60%に及ぶともいわれていることから,高齢の潜在患者が数知れず存在していることになる.心臓血管疾患のリスクが高い高齢者にとってのOSAHS治療は極めて重要である.しかるに,いまだ加齢にともない欠損歯数が増加しているなかで,多数歯欠損症例はOA治療の適応外5とされ,治療から放置されかねない現状は数多くのOSAHS患者にとって不幸であると言わざるをえない. 筆者は,現岩手医科大学名誉教授の田中久敏先生のもと,有床義歯補綴学の臨床・教育・研究に大学院時代を含め19年間に渡り従事してきた.大学を退職した現在でも,有歯顎者のみならず無歯顎を含んだ欠損歯列を有するOSAHS患者を多数例経験してきたことから,本稿では,今までほとんど記述されOral Appliances for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea-hypopnea Syndrome in Fully of Partially Edentulous PatientsYoshiki EndoOSAHSへの新アプローチ欠損歯列を有する閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者への口腔内装置の応用キーワード:閉塞型睡眠時無呼吸症候群,口腔内装置,部分欠損,無歯顎the Quintessence. Vol.31 No.12/2012̶2689

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