ザ・クインテッセンス2014年6月
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6 救急キットとは,お飾りでも保険でもない!瀬尾憲司新潟大学大学院 医歯学総合研究科歯科麻酔学分野連絡先:〒951‐8514 新潟県新潟市中央区学校町通2‐5274社会から問われる医療安全FEATURE巻頭特集 歯科医院内で発生する緊急事態には歯科医師はいかなる状況に対しても,迅速にそして適切に初期対応を行い,患者の生命の安全を守らなければならない.しかしすべてを歯科医院で対処できるわけでもない.歯科医師は薬剤を中心とした救急キットを準備する一方で,病態を正しく判断し基本的な救急処置の手技については日ごろから習熟するよう研鑽を積むことが重要である.単に,モノをそろえておけばよいというものではない.使えなければ,それは単なる「お飾り」でしかない. 歯科医院内の致命的な緊急事態とは呼吸困難と心臓発作である.呼吸困難は喘息発作と気道異物で,喘息死は発作開始から1時間以内に生じる.急性心筋梗塞や狭心症による心停止では5分以内の心臓マッサージで社会復帰率は41.5%にも上る1.119番通報から救急車到着までに要する時間は,8分30秒(平成24年全国平均)であることから,救急隊到着までの対応が重要である. したがって,喘息発作・気道異物・アナフィラキシーによる咽頭浮腫への対応と心停止への救命処置が求められる.心肺蘇生開始まで10分を超えると生存率は急低下35.8%3分以内41.5%3分~5分36.5%5分~10分27.8%10分~15分18.1%15分以上1か月後生存率本当に使えますか? その救急キット救急キットはあるけど使い方が……救急車到着までの対応が鍵救急車到着まで平均8.3分59the Quintessence. Vol.33 No.6/2014—1233

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