ザ・クインテッセンス2014年6月
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小児期の咬合治療を見直そう混合歯列前期に有効な側方拡大装置“CLEA”CLEA : A Simple Removable Slow Expansion Appliance for the Early Mixed Dentition Period髙橋喜見子キーワード:側方拡大,混合歯列,早期治療,スプリント作用,可撤式Kimiko Takahashi埼玉県開業 向陽歯科医院連絡先:〒359‐1111 埼玉県所沢市緑町4‐36‐41.小児期の咬合治療を見直そう1)小児期の咬合管理は整備されていない 筆者は以前,小児期の咬合管理は重要であるのに現状では整備されていないようであると述べた1.小児期の咬合治療は,小児歯科分野で咬合誘導,口腔成育等として定着しており2~4,矯正歯科分野では早期治療(1期治療)が,主に骨格系の改善を対象として行われている5. その一方で,専門外でも床矯正等による治療が広く行われている6.一般開業医で行われる矯正治療は治療の受けやすさという受診者側の利益はあるものの,場合によっては弊害も見受けられる.2)「とりあえず拡大」は危険 不適切な矯正治療の実例として,エックス線規格写真による診査がなされておらず骨格的異常が見過されていた症例や,長期間通院したのに治らないという相談を経験している.体系的な矯正診断をせず「とりあえず拡大」する安易な予防矯正は危険といってもよい.運転免許をもっていても,現在地・経路・目的地がわからない状態では走ることはできない.同様に簡単な矯正治療であっても,診査診断・治療技術・治療目標の設定がなければ,道に迷うばかりである.一生涯の口腔管理を担うかかりつけ歯科医であるならば,大切な小児期の介入であるからこそ,自分の子どもならどうするのかという気持ちで慎重に咬合治療に臨みたい. なお,長期的な治療計画に基づいて行われる小児期からの咬合管理を図1に示す1.2.いつどのような介入を始めるのか1)乳歯萌出期からの口腔機能育成に対する取り組みが重要 口腔は誕生後から変化し続け,時期に応じて介入の選択肢が変化する. 乳歯列期においては摂食・嚥下・呼吸といった口腔機能の発達に導かれて顎顔面の成長発育が進む7,8.この時期の口腔機能が正しくないと,歯列に及ぶ筋圧のバランスが崩れて不正咬合の原因になると考えられている9.たとえば舌や嚥下の悪習癖があると狭窄歯列となるといわれるが,これを起点として下顎の後退や側方偏位,さらなる舌機能の諸20Under20歳以下の患者に関する重要トピック132the Quintessence. Vol.33 No.6/2014—1306

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