ザ・クインテッセンス2014年6月
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はじめに──フッ化物歯面塗布の保険導入と適応拡大 平成26年度歯科診療報酬改定で,歯の喪失リスク増加への対応として,自立度が低下した高齢者などの在宅診療での初期根面う蝕に対するフッ化物歯面塗布処置が新たに保険収載された(13歳未満の小児のう蝕多発傾向者に対するフッ化物歯面塗布処置についても,その適応が拡大された). いずれも26年度改定に向けて,日本口腔衛生学会から提出された医療技術評価(再評価)提案書が,日本歯科医学会委員会,厚生労働省,中医協委員会で各々評価されて採択に至ったものである.基本的には,冒頭で述べた通り「歯の喪失リスク増加への対応」のための処置として評価されたと考えてよい.政府の重要な施策である「健康日本21(第二次)」に示される通り1,歯の喪失を防止し,口腔機能を維持・向上させて健康寿命の延伸,あらゆるライフステージにおける健康格差の縮小,生活の質の向上をはかるという考え方が,この保険収載の底流にある. フッ化物塗布という処置,患歯・患者管理という対応が評価され,医療保険に導入されたことは,予防や健康増進という考えの一端がう蝕の治療として認められたことにもつながることであり,画期的なこととして高く評価できるのではなかろうか.日本歯科医師会がキャンペーンしているように「健康長寿を支える歯科医療」という観点からすると,これらの治療法や患者を管理していくという考え方は,歯科本来の医療のかたちであるといえる.事実,初期う蝕であるエナメル質の表層下脱灰がフッ化物やその他の再石灰化促進材を積極的に用いることで健全な状態に回復することは,すでに実験の場のみではなく,臨床でも明らかになっていて,う蝕に対する管理型の治療法として確立されている(図1,2).う蝕の予防と治療再石灰化治療図2a 表層下脱灰した歯列を,定期的な管理とPMTCおよびCPP-ACPジェル剤のトレー装着で対応した.図2b 再石灰化治療後(冨士谷盛興先生のご厚意による).117the Quintessence. Vol.33 No.6/2014—1291

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