ザ・クインテッセンス10月
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歯科開業医のためのマウスピース矯正の光と影Lights and Shadows of Invisible Orthodontic Appliances for General Practitioner岩田健男/趙 健済*キーワード:マウスピース矯正,3Dデジタルテクノロジー,適応症,禁忌症Takeo Iwata, Cho Keon Je東京都開業 デンタルヘルス アソシエート代表*韓国延世大学歯科大学臨床教授,デンタルヘルス アソシエート海外講師連絡先:〒102‐0081 東京都千代田四番町8‐1 東郷パークビル4階 デンタルヘルス アソシエート20Over成人患者に役立つ必修トピックはじめに 上顎歯列弓または下顎歯列弓に透明プラスチック製のマウスピースを装着して,歯列矯正を行う矯正治療法の歴史は短い.しかし,その短期間に,この治療法を受け入れる患者数が急増している理由として,この治療法と患者のニーズがうまく合致していることが挙げられよう1~6. 従来から,矯正治療は矯正専門医に委ねることが一般開業医の常識であり,患者からの矯正治療の相談があれば,たとえやさしい症例であっても,知り合い,または近隣の矯正専門医へ患者を転医するものと考えられてきた.この常識には一理がある. たとえば,上下顎の対顎関係または上下歯列の対咬関係の異常の改善を不可欠とする症例の矯正治療は,充分な訓練を受けた,豊富な経験を有する矯正専門医でなければ,診断,治療計画,さらに治療術式を適切に遂行することができないのは明白であり,専門的な訓練と経験が劣る一般開業医が手を付ける範疇ではない.また,きわめて遺憾なことだが,適切な診断と治療計画が行われず,不良な,効き目のない透明マウスピースを患者に装着させていたため,不幸な結果を招き,訴訟にもつれ込んでいるケースも報告されている.そのため,この治療法の実践にあたっては,透明マウスピースの製作に携わる業者の選定も重要になろう. 一方,顆頭-円板アセンブリーが関節窩内で適正に安定し,顎位が正常であり,かつ現在の臼歯部の咬頭嵌合位を維持したまま,前歯部の審美性の改善を主目的とする矯正治療を行う方法に関しては,一般開業医でも治療できるテクノロジーが開発されてきた.その現在の旗頭がマウスピース矯正であろう.1997年以降から普及してきたこの矯正法は,3Dデジタルテクノロジーによる診断と治療計画,および治療結果を見据えて製作される複数のマウスピースを連続的に装着していくため,正しい適応症の判定と精密な計画に基づく治療ステップが踏まれれば,それなりの成果を得ることができる7~12. 本稿では,これから増えるであろう審美病(美しくなりたい病)患者の治療と深いかかわりをもつ矯正処置のなかで,一般開業医がそうした患者のニーズに答えるべく,比較的シンプルに導入できる透明マウスピース矯正について解説する.150the Quintessence. Vol.33 No.10/2014—2224

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