ザ・クインテッセンス2015年8月
7/8

高齢者の10年後を見据えて,いま何をすべきか? 我が国の高齢化は以前より指摘されていたが,少子化によりそのスピードはさらに加速し,ついには人口減少へと繋がった.平成25年には人口に占める75歳以上の割合は,約12.3%であったのに対し,平成37年には18.8%と予想されており,高齢化が進行することが懸念されている.そのような人口構造の変化を捉えた歯科診療の展開は行政任せにするだけでなく,個々の歯科医師が考えていく必要があるのではないだろうか. この20年の統計では,小児の平均う蝕歯数は12歳児では4.75本から1.00本へと激減している(図1).この結果から推測するに,若年者が歯科医院へ治療目的で来院する機会は減少する.一方高齢者の残存歯数は年々増加し(図2),この20年で3倍近く残存歯数が増加している.当然歯科医院へ来院する高齢者は増加し,この10年で歯科医院を受診した患者の年齢構成が右側へシフトする結果になっている(図3).小児のう蝕の減少と高齢者の残存歯数の増加で,歯科医院へ来院する患者の高齢化率は日本の高齢化率を大きく上回っているとも言われている. さらにこれが,今後10年で進展するならば,多くの歯科医院では診療の中心が高齢者に対応したものになると断言できる.もし,一般歯科診療所において「歯科において高齢化など関係ない」と考えている歯科医師がいるならば,10年後には患者減少でさらに苦しむことになろう(図4).また,高齢社会の進展で,インプラント治療を含む欠損補綴の需要が増大すると考える歯科医師も多いが,前記した通りこれからの高齢者は自分の健康について関心が高く,残存歯も多くなることから,欠損補綴の需要は現在陵北病院歯科診療部連絡先:〒192‐0153 東京都八王子市西寺方町315Hideo SakaguchiIn Anticipation of the 10 years of the Elderly. Now, Well should We Do?FEATURE特 集 4阪口英夫10年後にはどのような社会でしょうか1136the Quintessence. Vol.34 No.8/2015—1682

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です