ザ・クインテッセンス 2016年11月
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はじめに そのなぜ,そしてメカニズムの詳細は不明なのであるが,抜歯後の歯槽堤はたしかに「吸収」する.事実,この現象はこれまでも数々の形態計測研究によって検証され1,抜歯後の顎堤の吸収は3~6か月の期間でもっとも進行し,頬側骨の吸収を中心に水平方向に29~63%(2.46~4.56mm),垂直方向に11~22%(0.8~1.5mm)減少すると報告されている2. 顎堤の狭小化によって抜歯後の欠損補綴治療は困難になるが,とくに欠損部にインプラントを埋入する場合,その支持骨の喪失に直結するわけであるから,これを放置することはもちろん得策ではない.そのため,顎堤の保存療法(以下,alveolar ridge preservation:ARP)が以前にも増して注目されるようになった.ARPのEBM ARPの基本的な臨床術式は「抜歯→骨補填→創閉鎖」である3.少なくとも3壁はある骨欠損に対する骨造成であるから,インレーグラフトの1つであると分類してもよい.つまり,骨造成のテクニックとしては比較的シンプルである.しかし,ひとたびARPを行わなかった場合には,抜歯後の骨欠損は唇側骨の吸収が進み,2壁性あるいは1壁性の骨欠損へと進展する.こうなると骨造成のテクニックは,オンレーグラフト,あるいはguided bone regeneration(GBR)の適応範囲となるので,術式はより複雑になり患者に与える侵襲も増大する. 一方で,ARPの効果について,感染領域であった抜歯窩に骨充填をする術式ゆえに,「骨補填材は容易に感染する,あるいは血管のないところに骨は再生されない」といった意見も聞かれるが,結論からいえば,ARPの効果はポジティブであると考えて問題はない.この数年で発表された数々のシステマティックレビューがこれを詳述しているが1~7,ARPには垂直的にも水平的にも抜歯後の骨吸収を防ぐ効果があることを,もっとも質の高いエビデンスが示している1,3~5.さらに,Avila-Ortiz Gら4はその数量化にも試みており,メタ分析の手法により,ARPは頬舌側に1.89mm(95%信頼区間:1.41~佐藤琢也Minimally Invasive Surgery : New Approaches to Implant and Periodontal Plastic SurgeryTakuya Satohキーワード:Minimally Invasive Surgery(MIS),顎堤保存療法,歯槽堤増大術,歯間乳頭形成術大阪府開業 デンタルインプラントセンター大阪連絡先:〒538‐0044 大阪府大阪市鶴見区放出東3‐6‐9マイクロスコープで変わる歯周形成外科へのアプローチ第2回 狭小化する歯槽堤への対応: Ridge PreservationとRidge Augmentation 集中連載Minimally Invasive Surgery(MIS)Movieスマホで動画が見られる!(使い方:P7参照)P190,191184the Quintessence. Vol.35 No.11/2016—2624

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