ザ・クインテッセンス 2017年7月
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 歯髄保存の原則は「助かる歯髄を見極め,マイクロリーケージを防ぐこと」である.たとえば,MTAは,マイクロリーケージを防ぐ役割を担っている1.もし,助かる歯髄にMTAを用いれば,歯髄が治癒する.しかしながら,助からない歯髄にMTAを用いても,歯髄は治癒しない.戦う前に勝負は決まっているのである(図1). また,露髄のリスクがあってもう蝕を完全に除去するべきか,部分的う蝕除去かなどの臨床判断も非常に重要なテーマである. 私たちは,材料やテクニックに興味をもつ傾向にあるが,「診査」「診断」「臨床判断」も,歯髄の予後を決める非常に重要なステップである.今回は勝てる戦いを見極めるための戦略,「助かる歯髄」と「助からない歯髄」の鑑別診断について,科学的根拠に基づく診査・診断から,筆者の臨床経験に基づく知見まで紹介したい.■歯髄保存の原則は“助かる歯髄を見極め,マイクロリーケージを防ぐこと”なし← 感染(歯髄壊死)の範囲 →全部無← マイクロリーケージ →有最終修復の精度術式の選択覆髄剤の選択術者の技術歯髄保存可能性「低」歯髄保存可能性「高」低↑  歯髄の生活度  ↓高このエリアの症例はどのような治療を行っても治癒を期待できない図1 歯髄保存の原則は「助かる歯髄を見極め,マイクロリーケージを防ぐこと」である.助かる歯髄は,歯髄の生活度と細菌感染の範囲によって決まる.歯髄の生活度が高く(主に年齢が若く),細菌感染の範囲が小さいほど歯髄は治癒する.マイクロリーケージを防ぐために,精度の高い最終修復,成績の良い覆髄剤の選択,高い治療技術が必要になる.どんなに良い治療を行えても,助からない歯髄を治癒に導くことはできないため,助かる歯髄を見極めるための「診査・診断」が重要になる.53the Quintessence. Vol.36 No.7/2017—1437

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