ザ・クインテッセンス 2017年7月
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文献レビューからひも解く,デジタルによる印象採得の現時点での精度渡邊英彦Is That Fancy Wand Really Better Than My PVS? How Accurate Are CAD/CAM Systems?Hidehiko Watanabeキーワード:CAD/CAM,intraoral scanner(口腔スキャナー),marginal fit(マージンの適合性)Department of Restorative Dentistry, Oregon Health & Science University, School of Dentistry連絡先:2730 SW Moody Dr, Portland, OR 97201‐5042 USAはじめに:光学印象カメラは従来印象法を凌ぐ“魔法の杖”になったのか? 歯科器材のデジタル化が著しい昨今であるが,なかでも修復・補綴分野における印象採得のデジタル化に大きな注目が集まっている.歯科分野でのCAD/CAMの歴史をさかのぼると,Francois DuretというフランスのCAD/CAM(Computer-Aided Design/Computer-Aided Manufacturing)の先駆者が光学機器による口腔内の補綴装置の印象の実現を1973年の時点ですでに予測している1.そして,そこから10年以上を要して歯科分野でデジタルによる印象採得と補綴装置のデザインと削り出しを世界で最初に実現したのがSirona CEREC1(Chairside Economical Restorations of Esthetic Ceramics)である.あらゆる新規の歯科器材の例からもれず,初期のCAD/CAMシステムの評価は芳しいものではなかった.もちろん,Sironaのパイオニアとしての勇気には称賛を惜しまないが,ほぼ完成された既存のベースとキャタリストを練和して採得する物理的な印象法が精度のうえで明らかに勝っていたことから,マニアックな術者を除く一般的な開業歯科医師の間では,当時チェアサイドのCAD/CAMは普及のしようがなかった. 現在,CAD/CAMの米国での普及率はどうだろう? 近年のデータによると,18%の開業歯科医師が何らかのデジタル印象システムを歯科医院に備え,22%が光学印象のみならず補綴装置の削り出しもできるチェアサイドのCAD/CAM を使用しているという2.つまり,40%の開業歯科医師が少なくとも補綴装置の印象に光学印象機器の選択のオプションをもっているということになる.これらの歯科医師がすべての印象のケースをもれなくデジタル化しているのかどうかは不明であるものの,北米では学生臨床の印象採得の完全デジタル化に踏み切った大学もある. 一般開業歯科医師が高額なCAD/CAMの機器の導入を考えるとき,どういったアプローチを取るだろうか? 「まずは各メーカーが主催もしくはサポートする講習会に行ってどんなものか話を聞こ147the Quintessence. Vol.36 No.7/2017—1531

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