ザ・クインテッセンス 2017年7月
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患者のライフステージを考慮した自家歯牙移植・再植の新提案Change surface technique とLoad bearing mechanism の考え方はじめに インプラント補綴が臨床応用され,多くの患者のQOL改善に有用であることは疑いようのない事実である.しかし,インプラント治療の適応症を判断し損ねた結果,思いもよらぬトラブルに遭遇し,患者・術者ともにインプラント治療に対して負のイメージが残るケースが存在することも事実である.また,欠損部位への植立という共通点があるものの,インプラント治療と自家歯牙移植・再植は対極に位置するようにとらえられる傾向があり,移植・再植という治療法を患者が知らない,または医院によっては行っていない現状もある. そこで本稿では,若手歯科医師の筆者が行っている自家歯牙移植・再植について,基本的なコンセプトと症例を提示し,患者のライフステージを考慮した自家歯牙移植・再植の可能性について解説する.1.Change surface technique 移植医療において,contact surface,donor-recipient siteという概念が重要であることは周知の事実である.病的組織(感染,壊死,代謝異常)に対して,遊離移植片を移植したとしても生着する可能性はきわめて低く,また遊離移植片そのものは正常解剖と異なり,体液循環,感染防御の面で不利であり,recipient siteの条件を十分考慮された処置が望まれる1.つまり,病的表面(morbid surface)と正常表面(intact surface)を把握・分類し,どの面と面を対面させるかが移植治療において成功の鍵となる2〜6. 歯周組織においても同様であり,歯周疾患罹患歯および罹患歯周囲組織においては,その原因により,morbid surface,intact surfaceに分類される.一例を挙げると,歯根の破折や根尖破壊,側枝の存在により感染を生じている面はmorbid surfaceに分類され,その周囲の感染していない歯根膜組織をもつ歯根表面はintact surfaceに分類される.抜歯後の歯槽骨もしかり,骨瘻の形成面や不良肉芽で充満した新名主耕平The New Proposal of Autotransplantation of Teeth & Teeth Re-PositionKouhei Shinmyouzuキーワード:自家歯牙移植,再植,Change surface technique,Load bearing mechanism東京都勤務 たんぽぽ歯科クリニック連絡先:〒178‐0062 東京都練馬区大泉町4‐38‐13166the Quintessence. Vol.36 No.7/2017—1550

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