ザ・クインテッセンス 2017年11月号
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セメント質剥離の基礎と臨床確定診断の根拠とよりよい臨床術式を探るセメント質剥離の経過と病理組織所見───────────────須貝昭弘病理の立場からセメント質剥離を考える──────────────下野正基CONTENTS12  特 集 1 歯周・根尖周囲の単独あるいは複合的な骨破壊をともなう根表面の破折の一種とされる「セメント質剥離」.ここ数年,主に海外の文献で散見されるものの,本邦での報告は皆無に等しいといわれている.しかしながら,超高齢社会を迎えたわが国にとっては,セメント質剥離が高齢者に多発傾向があるといわれていることから,今後,大きな問題になりかねないとする声も聞こえてくる. 海外の文献によると,セメント質剥離は知見の不足と診断の難しさゆえに歯科医師間でも治療計画に統一見解がなく,科学的根拠に基づいた治療ガイドラインの確立が望まれている.治療方法としては,非外科処置(SRP,根管治療,レジン充填),外科処置のみ(フラップ手術,歯根端切除術等),GTRおよび骨移植をともなう外科的処置などが挙げられているが,セメント質剥離の部位によって一長一短があるとの報告もみられる. 今回は臨床の現場でセメント質剥離に遭遇し,生検を取って考察を試みた須貝昭弘先生の症例をもとに,前述のとおり依然として不明な点が多く,基礎系の専門家の見解がほしいとの希望もあり,東京歯科大学名誉教授の下野正基先生に基礎の立場から考えをご執筆いただく機会が実現した. エックス線写真による診断が可能な部位に発生したセメント質剥離であれば確定診断がしやすいといわれているが,それ以外の場合は神出鬼没の様相を呈し,診断は難しいとされている.今後,本邦ではますます超高齢社会が進むことが予想され,セメント質剥離が多く散見することが考えられる.セメント質剥離を加齢変化という括りにする前に,貴重な症例報告をもとに,基礎・臨床双方からの確定診断のためのよりどころを提示できればと考えている(編集部).48the Quintessence. Vol.36 No.11/2017—2360

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