ザ・クインテッセンス 2017年11月号
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口蓋側のエマージェンスプロファイルを考察するはじめに 審美補綴による修復を行うにあたり,長期的に歯周組織を安定させるには炎症と力のコントロールが重要であることはすでに広く認知されている1.また,補綴修復を行う際に,歯肉の退縮ができるだけ起こらないような支台歯形成法や,補綴装置へのエマージェンスプロフィルの付与の仕方もある程度明確になってきた2.口腔内に装着される補綴装置が歯肉と調和するための理想的な形態が「天然歯に近い形態」であることは,桑田正博先生,大村祐進先生が提唱されている3.しかし,口蓋側のエマージェンスプロファイルについては,これまであまり取り上げられなかったのではないだろうか.今回は,「より天然歯に近い形態とは何か」を模索するために,あえてその口蓋側について考えていきたい.頬側のエマージェンスプロファイル 症例1は,筆者が以前に咬合再構成を行った患者である(図1,2).上顎前歯部に注目してみると,頬側から隣接面にかけて3つのゾーンに分類し(図3,コラム1),エマージェンスプロファイルの与え方に差をつけ,歯周組織の安定を図っている.当然のことではあるが,歯肉の性状(thin scallop/thick at)や,歯の形態によって形成の深度やサブジンジバルカントゥアの与え方も異なってくる. 一口腔内でも,部位によって適正なコントロールをすることにより,より自然で安定した歯周環境を整えることが可能となる.桑田先生はこれを本来の姿(correct contour)と述べられている2.仮着した当日の状態では,エンブレジャー(歯間鼓形空隙)の形態が不自然であり,ブラックトライアングルが存在しているが,仮着1週間後にはエンブレジャーが少し埋まってきている(図4,5).術後4年が経過すると,クリーピングして歯間乳頭の形態も良くなっている.このように,correct contour が補綴装置に与えられ,メインテナンスが的確に行われていれば,経年的にみても歯周組織は装着時よりもさらに安定した状態を維持することが可能である(図6).藤原康則Consider the Emergence Prole of Lingual Side in Upper Anterior RegionYasunori Fujiwaraキーワード:エマージェンスプロファイル,サブジンジバルカントゥア,審美補綴京都府開業 ふじわら歯科クリニック連絡先:〒617‐0828 京都府長岡京市馬場見場走り1‐10SPEAKER’S ARTICLE第8回 日本国際歯科大会2018Iホール10/7(SUN) 130the Quintessence. Vol.36 No.11/2017—2442

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