ザ・クインテッセンス 2018年3月号
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臨床に生かす根管解剖学CBCTと歯科用顕微鏡を駆使した“歯内療法新時代”の連載(全12回)155the Quintessence. Vol.37 No.3/2018—0659吉岡隆知東京都開業 吉岡デンタルオフィス連絡先:〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台2-3-13-1Fはじめに 上顎前歯の形態が,側枝を除けば比較的単純な形態であることを前号で解説した.しかし,注意すべき解剖学的問題がある.1つは歯の特殊形態で,もう1つは根尖の歯槽骨面からの突出である.これらは上顎前歯に限定して出現するのではなく,どの歯にもみられる可能性はあるが,とくに上顎前歯に多くみられる.今回は,上顎前歯の特殊形態について解説する.1.上顎前歯の特殊形態 上顎前歯のなかでも,側切歯には図1に示すような特殊形態が出現しやすい1.ただ,他の歯に比べれば出現率は高いとはいえ,滅多にみられるものではない. これらの形態は,歯の外表面が内側に陥入して生ずる.主として歯冠部で陥入すると盲孔や陥入歯となり,歯根部で陥入すると口蓋側根面溝(palato- radicular groove)となる.根面溝の陥入の程度が著しいと過剰根となる.1-1.口蓋側根面溝 口蓋側根面溝は,上顎側切歯に好発する歯冠の口蓋側歯頸部から歯根にかけて発生する溝である.中切歯にみられることもある.まれに大臼歯にも出現するようである2.エナメル質から歯根にかけて,表面が歯の内部に向かって陥入した形態となる.Gu3は,この形態をマイクロCTで調べ,溝の深さ,長さ,および根管形態への影響の観点から図2のように3分類した.Tanら4はCBCTで診断し,溝の深さと根管形態への影響の観点で図3のように3分類した. この形態の存在に気がつかないと,根管治療だけを行っても治癒しないため,難治症例と誤解されてしまう可能性がある.図4は根尖性歯周炎として根SPEAKER’S ARTICLE第8回 日本国際歯科大会2018Fホール10/6(SAT)午後第3回 上顎前歯の解剖学的問題側切歯に出現しやすい特殊形態図1 側切歯に出現しやすい特殊形態.・口蓋側根面溝・過剰根・盲孔・陥入歯

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