ザ・クインテッセンス 2018年4月号
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成人・高齢者のう蝕管理に有効な3DSと個人トレー法によるフッ化物応用はじめに 筆者の医院がある滋賀県東近江市は,琵琶湖の東部にある人口約10万人の町です.1978年の夏に開業し,現在に至っています.開業当初よりう蝕と歯周病の予防には定期検査を導入するなど,力を注いできました.また,PMTCもDr. Axelssonの講義等を拝聴し,1994年より多くの患者に実施しています. 現在,日本は超高齢社会となり,2016年度の歯科疾患実態調査では,8020達成率は51.2%に達しています.しかし,う蝕は45~54歳以上で増加しており,とくに65歳以上では前回調査と比較すると著明に増加傾向がみられます.また,歯周疾患も少しは改善傾向にありますが,高齢者の残存歯数が増加したため,これから多くの人が罹患することが予想されます.さらに,充填物や補綴装置の周りからの二次う蝕,また歯周病によるセメント‒エナメル境の露出(日本人の歯肉は欧米人に比べて厚みは薄く,ひ弱であるので注意が必要との報告がある1)からの象牙質う蝕が見られるケースも多くあります. このような加齢にともなうう蝕に対して,新たなう蝕をつくらない(個人のDMFTを増加させない)ことを目指して,当院では2001年より,デンタル・ドラッグ・デリバリーシステム(3DS)と個人トレーを用いたフッ化物の応用によるう蝕管理(図1)を一部の患者に導入しています.本稿では,その実際をご紹介します.1.個人トレー法(3DS)によるフッ化物応用を用いたう蝕管理の有効性 2001~2014年の当院でのDMFTの変化を図2に示します.対象とした患者は,当院に定期的に来院している患者の一部です.対象患者55名は成人・高齢者で,年齢は2014年時点で約70%が56~76歳でした.55名中,DMFTに変化がみられなかった者は48名(87%)で,増加した者は7名(13%)でした.DMFTの変化がみられた理由は,歯の破折,歯周病,膠原病(リウマチ)でした.87%の患者には変化がみられなかったことから,ある程度有効性が認められると井田 亮/野邑浩美Effect of the 3DS and Fluoride Application on the Prevention of Dental Caries in the Adult and ElderlyAkira Ida, Hiromi Nomuraキーワード:3DS,個人トレー法,フッ化物応用滋賀県開業 井田歯科東診療所連絡先:〒527‐0025 滋賀県東近江市八日市東本町9‐2158the Quintessence. Vol.37 No.4/2018—0884

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