ザ・クインテッセンス 2018年5月号
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76the Quintessence. Vol.37 No.5/2018—1044リグロス®を用いた歯周組織再生療法成功に導くためのコツ1.はじめに−リグロス®誕生が歯科界に与えたインパクト− 筆者には,どうしても忘れられない患者がいる.Sさんという40代の男性である.卒後間もないころに先輩から引き継いだ患者であった.彼は来院するたびに歯肉膿瘍が形成され排膿があり,筆者は縁下のデブライドメントを繰り返し行った.彼が次に来院すると別の部位に膿瘍が形成され,排膿処置をいたちごっこのように繰り返すのが精一杯であった. その当時,筆者が知りたい情報が記された歯周病に関する書物はほとんどなかった.教科書等の歯周病の病因論について記されたページを開くと,Host-Parasite interactionの不均衡で骨吸収が進行することが記されており,歯周病の重篤度は歯肉溝に溜まっている細菌の量や質だけでは説明できないとあった.そして,それを読み進めると患者の素因(predisposition)が重篤度に関連すると説明されていた. 当時の筆者は,この素因という単語にたいへん強い違和感を覚えた.重度の歯周炎患者には,何かわからないが悪い素因Xが潜んでいるということ.これはすなわち,家系的に病気になりやすい因子があるということであり,なんだかその得体の知れない素因をもっているとよくないというレッテルを患者に貼りつけるような感覚を覚えたからである. 次にSさんと診療室で対面したときも,やはり歯肉膿瘍が形成されていた.そのときにも,切開排膿処置をするしかなく,いつものように「Sさんの歯ぐきは他の方より弱い歯ぐきで……」と歯肉の質の弱さの説明をするのがやっとであった.Sさんは若い筆者のおぼつかない説明に,いつも首を縦に振ってくださっていた.しかし,今回は「先生,もういいんです.私の歯ぐきが人より弱いのはわかっています.私の親父も早くから入れ歯のお世話になってますし……」というSさんの言葉が胸に刺さった.苦しかった.高山真一Periodontal Regenerative Therapy Using REGROTH®:Clinical Tips for SuccessShin-ichi Takayamaキーワード:歯周組織再生療法,リグロス®滋賀県開業 高山歯科医院連絡先:〒520‐0025 滋賀県大津市皇子が丘2‐10‐25 大津MARY 1階特 集 3

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