ザ・クインテッセンス 2018年6月号
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第三大臼歯を科学する矯正,歯周の立場から6464the Quintessence. Vol.37 No.6/2018—1278加治彰彦Scientific Approach to the Third Molar from the Perspective of Orthodontics and PeriodonticsAkihiko Kajiキーワード:第三大臼歯,矯正治療,前歯部叢生,歯周環境東京都開業 半蔵門ファミリア矯正歯科医院連絡先:〒102‐0083 東京都千代田区麹町1‐6‐6 プルミエ麹町ビル3F特 集 2呼ばれる由来は,「平均寿命の短かった昔,親知らずが生えてくる20歳前後では,すでに親は亡くなっていたから」「仮に親が生きていたとしても,もう子どもの歯には関心がなく,親が知らないうちに生えては第三大臼歯が存在していたおかげで矯正移動にメリットがもたらされるケースもある(図1c). 第三大臼歯はわれわれ歯科医師にとって身近なものであるにもかかわらず,案外知らないことも多いのではないだろうか? 本稿では,第三大臼歯の生活のなかにみるヒトとのかかわりからはじめ,主に矯正学的・歯周病学的な観点から第三大臼歯とのかかわりについて検証したい.また,矯正臨床における第三大臼歯の有用性についても症例を提示して述べていきたい.1)“親知らず”呼称の由来 “親知らず”という言葉は,江戸時代に刊行された俳句の書『毛吹草』の中の一句「姥桜生ゆる若葉や親不知」に初めて登場した.第三大臼歯が親知らずと 日常臨床において第三大臼歯は“厄介者”として取り扱われることが多い.現に症状があり,病的状態が明らかな場合は,患者も同意し,第三大臼歯抜歯へ移行することが多いであろう(図1a).一方,無症状で病的状態も認められない状況下では,歯周病,う蝕,叢生の予防という観点から第三大臼歯を抜歯するかどうかの判断は難しく,術者によって見解が異なるであろう.また,患者によっては,無症状で病的状態にない第三大臼歯の抜歯に対して抵抗を示す者もいるであろう(図1b).また,場合によっはじめに1第三大臼歯の呼称・疫学

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