ザ・クインテッセンス 2018年8月号
1/8

システム論的視点から咬合高径の決定法 前編矯正治療およびヒンジアキシストランスファーされた咬合器上で咬合高径を決定する方法46the Quintessence. Vol.37 No.8/2018—1744荒谷昌利Considering the Procedure for Determining OVD from the System-Theoretic PerspectiveMasatoshi Arayaキーワード:咬合高径,咬合再構成治療,側方セファロ埼玉県開業 荒谷デンタルクリニック連絡先:〒344‐0061 埼玉県春日部市粕壁1‐9‐46特 集 1 生体にとっての最適な咬合高径はピンポイントで存在すると思われるが,その特定は非常に困難であり,100%の確実性をもって設定できる保証はない.ましてや,成人のある種の顔面骨格形態や,後述する上下最後臼歯部の高径などが,その最適な咬合高径を決定する際にその要求を厳しく制限してくる. したがって,われわれにできることは,あらゆる視点から患者の咬合高径を評価し,最適な咬合高径に可及的に近いと思われる,生体の許容範囲内の位置にて咬頭嵌合位を確立することが,安定した予後に大きく影響するだろう.おそらく,筆者にとって咬合高径の決定こそ,完全な解答がない永遠のテーマになることが推測される. 本稿は前・後編の2回に分け初診時の患者の咬合高径が適切でないと診断し,これを変更する必要があると考えた4症例を紹介しながら,システム論的視点からの咬合高径の決定法について考えてみたい.はじめに 日常臨床において,全顎における矯正歯科治療や咬合再構成治療を行う際に,筆者が必ず守る原則は,①整形外科的に安定した顆頭位のもとで適切な前歯および犬歯部の被蓋を付与すること,②①によって下顎がより垂直的な咀嚼パターン(mandibular verticalization)を実行しやすくすること,③垂直的な咀嚼パターンを保証するための遺伝的歯冠形態を臼歯部に与えること,である. これら三位一体ともいうべき原則がすべて確立できたとき,良好な治療結果・予後が約束されると信じている.そして,この成功を左右するもっとも重要なファクターこそが「適切に設定された咬合高径」だと考えている.Movieスマホで動画が見られる!(使い方:P3参照)P57本論文では,本文中に*で表記された部分の用語解説を61ページに掲載している.

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る