ザ・クインテッセンス 2018年8月号
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を考える47the Quintessence. Vol.37 No.8/2018—1745視点から咬合高径を俯瞰して見る必要があると思われる. ここで言うより大きな視点とは,顎口腔システムの主要な構成要素である顎関節,上下歯列,口唇を含む顔面軟組織,さらには隣接する呼吸システムの構成要素である気道との関連性を同時に捉える視点を意味する.ある生命システムがどのような構成要素から成り立っているかは見分けられたとしても,全体の性質は,構成要素の単なる総和とはつねに異なる. たとえば,平行模型上でどんなに綿密な評価をしても,顎口腔システム全体の評価は決してできない.咬合器にセントリックポジションで適切に付着された歯列模型を用いることは少なくとも必要であり,顎関節,硬組織,気道,顔面軟組織などを含めた評価が可能な側方セファロは必要不可欠な診査となる.システム論的視点とはどういうことか?1 われわれが治療上介入するのは,顎関節,歯列,顔面軟組織等から構成される顎口腔システム(咀嚼システム)である. 咀嚼システムは,われわれの生体という大きなシステムを構成する1つの,より小さなシステムであり,またその周囲には生体を構成する異なるシステム,たとえば呼吸システムが存在する.咀嚼システムで起きている何らかの不調和が,この呼吸システムに多大な影響をもたらしていることが少なくない事実は,あまり重要視されていないのではないだろうか. とくに咬合高径を評価する場合,上下歯列の咬頭嵌合状態のみに注目するという,いわゆるtunnel vision的(視野狭窄的な)評価ではなく,より大きな細胞組織器官システム未分化混沌特化秩序▲システムの進化は,未分化の混沌とした状態から部分への分化(特化)へと移行することによってのみ,秩序を確立することが可能となる.顎口腔系の問題は,システムにおける問題(障害)であり,細胞レベル,組織レベル,器官レベルの障害ではない.われわれが口にする“咀嚼器官”とは,顎口腔システムを構成する部分である.硬組織レベルにおける部分的問題解決策や器官問題解決策では,解決することは困難であろう.真に包括的な問題解決策を望むのであれば,システムレベルでの解決策を採用すべきであろう1~4.

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