ザ・クインテッセンス 2018年8月号
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診断力連載口腔粘膜疾患診断力テスト本連載は,口腔粘膜疾患の1症例の資料(口腔内写真など)を提示し,読者にその診断名・治療方針を考えてもらう欄である.119the Quintessence. Vol.37 No.8/2018—1817家族歴:父親・胃癌,兄・悪性リンパ腫.全身状態:38℃台の発熱のため倦怠感を訴えていた.眼瞼結膜は軽度貧血,顔貌は左右対称,顔面皮膚に発赤や腫脹なし.顎下および頸部リンパ節に圧痛や腫脹なし.服薬:ブロチゾラム®錠,オルメテック®錠,バイアスピリン®錠,セフゾン®カプセル,ロキソプロフェン®錠,レバミピド®錠.現症:全顎的に歯肉が浮腫性に腫脹し,辺縁部では発赤が強く,さらに歯間乳頭部では一部壊死をともなっていた.₈は動揺が著しく,全体的に口腔内の清掃状態も不良であった.主訴:歯肉の腫れ,痛み.患者:69歳,男性.身長163cm,体重64kg.現病歴:約2か月前に皮疹が生じて近くの皮膚科を受診したが原因は不明.1か月前に高血圧症のため通院している内科で血液検査を行い,軽度の貧血を指摘された.2週間前には大腸ポリープの経過観察のため消化器内科を受診し,血液検査で白血球数の増加を指摘された.その後,とくに異常はなかったが,2,3日前から急な発熱を生じ,さらに下顎歯肉の痛みをともなうようになり当科を受診した.既往歴:大腸ポリープ(43歳),脳梗塞の疑い(65歳),高血圧症(68歳).図1 a:歯肉は全顎的に浮腫性に腫脹し,辺縁歯肉で発赤が強く,一部では壊死をともなっていた.b:₈は動揺が著しく,周囲の歯肉は肉芽状に腫脹していた(ミラー像).c:パノラマエックス線写真では,₈は周囲の歯槽骨の吸収が著しく,浮遊歯の状態であった.その他の部位では軽度の水平的歯槽骨吸収像を認めた.執筆:神部芳則*/コーディネート:岩渕博史*1 *自治医科大学歯科口腔外科学講座*1神奈川歯科大学歯学研究科顎顔面機能再建学講座代表連絡先:*〒329‐0498 栃木県下野市薬師寺3311‐1第8回「発熱があり,歯肉が腫れて痛い」答は次頁症例の概要Q以下の症例に対する,診断および治療方針は?abc

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