ザ・クインテッセンス 2018年9月号
7/8

根面被覆術知識の整理とupdate第2回 治療結果に影響を与える外科処置時の因子隔月連載(奇数月に掲載)137the Quintessence. Vol.37 No.9/2018—2093はじめに 第1回(7月号)では,歯肉退縮の重症度と治療の限界を把握するための術前診査,また歯肉の厚みによる上皮下結合組織移植(connective tissue graft:CTG)の必要性について述べた.一般的に,根面被覆術はテクニックセンシティブな治療と考えられているが,正確な診断を行い,各ステップで治療結果に影響する因子を把握すれば,テクニックセンシティビティを最小限にできるはずである. 第2回では,術式を論理的に考えるための知識を整理し,現在明らかになっている外科処置時の影響因子について紹介したい.1術式の考え方 根面被覆術は当初,露出根面を移植片を用いず有茎弁で被覆する手法が用いられていた.具体的には歯肉弁歯冠側移動術(coronally advanced ap:CAF)や歯肉弁側方移動術(laterally positioned ap:LPF)である1,2.つづいて,遊離歯肉移植術(free gingival graft:FGG)による根面被覆が登場し,CTGの応用,CTGを併用した術式の改良などといった歴史的変遷を経ている3〜5.有茎弁(CAF,LPF),FGG,CTG,これらの術式は現在でも使用されており,まずはそれぞれの特徴を理解しておきたい(図1).2CTGを併用する術式 CTGを併用した根面被覆術は,CAF単独と比較したとき,高い完全根面被覆率と歯肉退縮量の減少,角化歯肉幅の増大などが期待できる6~8.Langer Techniqueの発表以降,CTGを併用した多くの術式が登場した9〜13.そこで改良されたのは,移植片への血液供給,術後の審美性,術式の単純化などである.移植片への血液供給を考慮した代表的な例としては,乳頭部を離断しないトンネルテクニックがある.また,露出根面上のCTGの上にカバーフラップを重ねる方法はバイラミナテクニックと呼ばれ,移植片へのより確実な血液供給に寄与している14,15.術後の審美性に関して,CTGを併用した術式と有茎弁による根面被覆を比較したとき,CTGは瘢痕をともなうことが多く,審美的に不利な傾向にある16.尾野 誠キーワード:根面被覆術,外科処置,単独歯,複数歯,フラップ京都府勤務 四条烏丸ペリオ・インプラントセンター連絡先:〒600‐8007 京都府京都市下京区四条高倉西入る立売西町76 アソベビル3F

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る