ザ・クインテッセンス 2018年9月号
8/8

デジタル総義歯の未来像─自由度の高い人工歯デザインへの応用─はじめに クラウンブリッジ分野においては,CAD/CAM冠の普及や光学印象法の発展に代表されるように,デジタルデンティストリーはすでに身近な技術である. 一方,総義歯分野では,いまだデジタル化の発展途上という状況である.これは,粘膜面に対する光学印象採得が技術的に難しいことが原因の1つと言える1,2.しかし,光学印象を用いずとも,模型から補綴装置を製作するCAD/CAM技術は総義歯でもクラウンブリッジと同様のはずである.それではデジタル総義歯の普及を阻む問題はなんであろうか? 総義歯治療のデジタル化の利点は多数ある.そのなかでも,筆者らが注目しているのはデザインの自由度の高さである.とくに臼歯部人工歯形態を自由に設計できることは,咬合の安定をもたらし,難症例への対策として有効な手段となる3. このたび,総義歯の臼歯部人工歯排列と形態デザインにデジタル技術を応用し,興味深い知見を得た症例を報告する.また,これら症例をとおしてデジタル総義歯の今後の展望について考察する.臼歯部人工歯排列位置の重要性 総義歯による咀嚼の開始初期においては,食品は咀嚼側のみで粉砕され,反対側の臼歯部は接触しない(図1).この片側性咬合平衡が成立しなくては良好な結果を得ることは難しい.そのためには,臼歯部人工歯の排列と咬合接触位置が重要なポイントとなる3.この片側性咬合平衡に主眼を置いた新しい岡本 信*/坂本秀輝*1Future Vision of Digital Complete Denture Prosthesis―Application to Freedom of Articial Teeth Design―Makoto Okamoto, Hideki Sakamotoキーワード:デジタルデンティストリー,OMデンチャーシステム,総義歯*広島県開業 岡本歯科医院*1広島県勤務 OMデンチャーラボ*代表連絡先:〒729‐0104 広島県福山市松永町352‐13図1 咀嚼の開始初期には,片側咀嚼時に義歯が安定している必要がある.片側性咬合平衡の成立咀嚼側平衡側食べ物義歯義歯Movieスマホで動画が見られる!(使い方:P3参照)P163,164,166,169161the Quintessence. Vol.37 No.9/2018—2117

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る