ザ・クインテッセンス 2018年10月号
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はじめに 歯肉退縮は,成人に高頻度で認められる所見である.1,400名を対象とした調査結果1,2より,少なくとも1mm以上の歯肉退縮に罹患した患者は約80%存在することが明らかにされている.単独歯の歯肉退縮治療のため,いくつかの手法が提案されてきたが,術後における完全な根面被覆の達成度はさまざまである3.臨床の現場では,複数歯の歯肉退縮にしばしば遭遇する.これらの欠損は,外科処置範囲がより広くなり,かつより多くの解剖学的多様性が存在しうるため4,さらに治療が困難となる.近年の疫学調査5の結果より,歯肉退縮の39%が,セメント-エナメル境の喪失をともなう非う蝕性歯頸部疾患と関連することが示されている.これら非う蝕性歯頸部疾患は,部分的もしくはすべてのセメント-エナメル境の喪失をともなうセメント質およびもしくはエナメル質の侵襲を引き起こす6.このような場合,解剖学的歯頸部の象牙質とセメント質との間に色調の差異が認められないため,歯肉退縮を規定もしくは測定することは不可能である.このような状態では,関連病変(歯肉退縮+非う蝕性歯頸部疾患)の完全被覆は予知性の低いゴールとなる.しかしながら近年,この種の欠損と関連して生じた歯肉退縮は,グラスアイオノマーセメント7~10もしくはコンポジットレジン11,12充填と歯肉弁歯冠側移動術とを併用することで,治療を成功裏に行えることが示されてきた.これまでのところ,複数歯に生じた非う蝕性歯頸部疾患をともなう歯肉退縮に対する他の外科/修復治療の有効性についての情報は欠落している. 近年,新しい二層構造異種コラーゲンマトリックス(Mucograft®,Geistlich)が,単根歯もしくは複根歯の歯肉退縮に対する治療のため,歯肉弁歯冠側移動術とともに移植する代替材料として提案されてきた.これらの研究結果より,根面被覆および歯肉退縮のWORLD ARTICLE:特別編第8回日本国際歯科大会海外演者関連論文Private Practice, Naples*Department of Biomedical and Neuroscience,Bologna University,Bologna,ItalyQuoted from : INTERNATIONAL JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYOriginal Title : Full-mouth treatment of gingival recessions and noncarious cervical lesions with coronally advanced flap and xenogeneic collagen matrix : a 2-year case reportVOLUME11 , NUMBER4 , 2016©Quintessence Publishing Company Inc.キーワード:歯肉退縮,非う蝕性歯頸部疾患, コラーゲンマトリックス異種コラーゲンマトリックス移植をともなう歯肉弁歯冠側移動術による全顎的な歯肉退縮および非う蝕性歯頸部疾患の治療:2年間のケースレポートNello Martiniello/Martina Stefanini*/Giovanni Zucchelli*翻訳:岩野義弘(東京都開業 岩野歯科クリニック)99the Quintessence. Vol.37 No.10/2018—2309SPEAKER’S ARTICLE第8回 日本国際歯科大会2018Bホール10/7(SAT)午前

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