ザ・クインテッセンス 2018年11月号
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見方35the Quintessence. Vol.37 No.11/2018—2491れ以上に一口腔単位の個体差や一患者単位の個人差が影響してくる.個体差とは,年齢・喫煙の有無・歯肉のタイプ・全身疾患の有無など,患者固有の要素であり,一方で個人差とは,患者の性格・社会的背景・経済的背景などの患者を取り巻く要素のことを指す.治療結果にもっとも影響するのは個人差であり,たとえばどんなに治りやすい歯周組織をもっていたとしても,患者が治療に協力的でなければ歯周治療は成立しない,ということになる. 個人差は非常に重要な要素であるが,個人差から考えてしまうと患者固有の要素,個体差を見落とすことになる.そこで,歯周病症例の難易度をみるためには,まずは個体差に注目すべきである. では個体差はどのようにみればよいのであろうか.2.個体差の見方 千葉は歯周病症例を“罹患度”,“進行性”,“回復力”の3つの視点でみることを推奨している(図2)3,4.1)罹患度と進行性 “罹患度”とは歯周病のかかりやすさ,つまり患者の年齢に対する骨吸収の大きさを指し,“高”,“低”で表す.“進行性”は歯周病の進みやすさ,つまり現在歯周病が進もうとしているのか,それとも進行が止まっているのか,その判断を指す.進行性を左右する因子としては,プラーク,喫煙,ブラキシズムなどのパラファンクションなどが挙げられるが,進行性の判断としてはデンタルエックス線写真における歯槽頂部歯槽硬線が明瞭か,消失しているかで判断することが多い.歯槽頂部歯槽硬線(図3)は硬い皮質骨のバリアを示し,その消失はそのバリアの決壊を意味する.進行性も“高”,“低”で判断する.患者…個人差口腔…個体差歯…部位特異性図1 臨床において考えるべき3つの視点.図3 歯周病の進行性.歯槽頂部歯槽硬線の消失の有無で判断.58歳,女性.下顎右側臼歯部の初診時・SPT時.初診時では歯槽頂部歯槽硬線は失われており,進行性が高い状況であるが,SPT時にははっきりとみえるようになっており,進行性は低くなっている.図2 歯周病症例は3つの視点でみることが推奨される.罹患度 ……… 過去進行性 ……… 現在回復力 ……… 未来04 506 5

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