ザ・クインテッセンス 2018年11月号
6/8

83the Quintessence. Vol.37 No.11/2018—2539 自家歯牙移植への関心が近年ヨーロッパを中心に高まりつつある.その背景には,歯牙移植における創傷の治癒の解明とCBCTを含めた三次元分析の応用の日常化があげられる. 自家歯牙移植を成功させる条件の1つとして,ドナー歯(移植歯)が抜歯窩外(口腔外)にある,つまり血流が途絶えた状態の時間をいかに短くするかをあげることができる1.また,移植床を形成する際,移植歯を何度も試適する間に歯根膜へダメージが加わることから,レプリカを利用することで歯根膜へのダメージを軽減できることも大きな利点といえる. 近年,コンピューター・ソフトウエアを用いた3D解析およびシミュレーションの発展は急速であり,インプラント治療のみならずさまざまな歯科治療への応用が普及している.しかし,その導入費や 3Dレプリカを作成するためには,CTデータ,パソコン,ソフトウエア,3Dプリンターが必要である.今回紹介する筆者の方法ではフリーソフトを使用するため,初期投資としては3Dプリンターのメインテナンス費用は決して安くはなく,移植治療への応用はまだ一般的にされていないのが現状だ. しかし,本稿で紹介する,ダウンロード可能な無料ソフトと近年急速に普及しつつある安価な3Dプリンターを導入すれば,だれでもドナー歯や受容側の3Dレプリカを作成することが可能である.これにより移植のシミュレーション(術前トレーニング)による手術時間の短縮(症例1,詳しくは後述),レプリカ歯を用いた試適と移植床形成後のドナー歯の抜歯が可能になり(症例1,2,詳しくは後述),歯根膜へのダメージが軽減することにより移植の成功率向上につながることが期待される. 本稿では,3Dレプリカの具体的な作成法を解説したい.み(安いもので数万円より)で済むことが特徴である. 図1に示す3Dレプリカ作成手順にしたがって,以下解説する.3Dレプリカの作成手順の主な流れCTデータのエクスポート1CTデータのインポート2Segmentation(セグメンテーション)3Smoothing(スムージング)43Dプリント5図1 3Dレプリカの作成手順.はじめに3Dレプリカ作成手順

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る