ザ・クインテッセンス 2018年11月号
7/8

根面被覆術知識の整理とupdate隔月連載(奇数月に掲載)第3回     戦略的な根面被覆術(最終回)121the Quintessence. Vol.37 No.11/2018—2577はじめに 第1回,第2回では根面被覆の必要性から診査・診断,術式の考え方,また術前や術中に考慮する点について解説した.最終回では,これまでの内容を踏まえ,臨床で術式の判断に迷いやすい症例を中心に,その診査・診断,治療の実際を紹介したい.戦略的な根面被覆術 現在,Miller ClassⅠ~Ⅱの歯肉退縮において完全根面被覆を達成するための最適な術式を考えた時,上皮下結合組織移植(CTG)を併用した歯肉弁歯冠側移動術(CAF)は,平均的にもっとも良い結果が報告されている1〜4.しかし,第2回でも触れたが,治療の二次的な目的が審美性の向上であるのか,Biotypeの改変であるのか,術前の状況によっては他の術式を選択するほうが望ましい場合もある.つまり,個々の歯の状況に合わせた治療の戦略が問われることになる.とくにCTGの適用については,その必要性やサイズ,位置づけを慎重に検討するべきである.CTG併用の必要性は,これまで述べたように術前の角化歯肉幅と歯肉の厚み,隣接面のアタッチメントレベルで判断することができる.今回は,歯肉退縮のなかでもより治療の戦略が問われるMiller ClassⅢの症例に対する実際のアプローチを紹介したい. 本連載では,歯肉退縮の新たな分類法としてCairoの分類を紹介した5.この分類法は,これまでとくに予後が不明確であったMiller ClassⅢの歯肉退縮に対する根面被覆術の予知性とCTGの必要性を考えるうえで有用である.Cairoの分類のとらえ方とCTGの必要性を判断するためのDecision Tree を図1に示す.複数歯の歯肉退縮に対する術式を考えたとき,改良型歯肉弁歯冠側移動術(MCAF)は,部位特異的にCTGを適用できるため,各歯の状況に合わせた戦略的なアプローチが行えるメリットがある.一方,改良型トンネルテクニック(MCAT)は基本的にCTGを併用するテクニックであり,対象歯がすべてThin Biotypeであったり,角化歯肉幅が少ない,あるいはRecession Type2の症例においては有効な術式と考えられる.今回は,これらの術式を中心に症例を通して解説する. Case1は上顎前歯部複数歯におけるMiller Class尾野 誠キーワード:Cairoの分類,CTG,MCAT京都府勤務 四条烏丸ペリオ・インプラントセンター連絡先:〒600‐8007 京都府京都市下京区四条高倉西入る立売西町76 アソベビル3F

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る