ザ・クインテッセンス 2018年11月号
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固有鼻腔直下に逆性埋伏した上顎中切歯を 開窓牽引治療した2症例はじめに 埋伏歯の発現は中村ら1によると,調査数1700人中61人(3.6%)に認められる.発現頻度は上顎中切歯で61人中22.9%と,智歯を除くその出現部位としてはもっとも多い.また,萌出遅延歯を対象とした兼子ら2の報告によれば6歳以上の新患1050人中76人(7.2%)に萌出遅延を認め,歯数は76人中93歯,上顎中切歯の埋伏は52歯(55.9%)であった.一方,埋伏中切歯に対する治療報告は極めて少ない.その治療は抜歯,開窓,開窓牽引,経過観察に分けられる. 今回,上顎中切歯の逆性埋伏2症例に対し,外科的開窓,牽引を行い良好な結果を得た. 症例1は初診時7歳11か月,女性.上顎左側中切歯の未萌出のため,当医院を紹介され来院した.症例2は初診時7歳8か月,女性.不正咬合を主訴に来院した.パノラマエックス線撮影,セファログラム撮影を行ったところ,症例1は左側固有鼻腔直下で唇面を口蓋側に,舌面を唇側に向け,₁が逆性に埋伏していた.症例2は右側固有鼻腔直下で同じく唇面を口蓋側に,舌面を唇側に向けて₁が逆性に埋伏していた.症例1,2とも治療は外科的に開窓を行い,舌面にリンガルボタンを装着し口腔内に設けた固定装置から牽引を行った.₁が歯列内に配列されたことを確認し,すべての装置を除去した.治療期間について,症例1は2年5か月,症例2は2年4か月であった. 以下,逆性埋伏中切歯の開窓牽引治療について解説してみたい.症例1初診時所見患者:初診時年齢7歳11か月,女性主訴:₁の未萌出家族歴:父,母,兄とも埋伏歯の既往はない既往歴:初診までに上顎前歯部における打撲,転倒,強打等の既往はない顔貌初見:顔面左右対称.側貌はconvex type大内仁守*/潮田高志*1/笠原清弘*2Two Clinical Reports of Tooth Fenestration-traction for Inversely Impacted Maxillary Central Incisors under Specic Nasal Cavities.Kimimori Ouchi, Takashi Ushioda, Kiyohiro Kasaharaキーワード:逆性埋伏歯,固有鼻腔直下埋伏,開窓,牽引*東京都開業 おおうち矯正歯科・小児歯科クリニック*1多摩北部医療センター歯科口腔外科*2東京歯科大学口腔病態外科学講座*代表連絡先:〒202‐0014 東京都西東京市富士町4‐33‐10 東伏見ヒルズ1,2F140the Quintessence. Vol.37 No.11/2018—2596

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