ザ・クインテッセンス 2018年12月号
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診断力連載口腔粘膜疾患診断力テスト本連載は,口腔粘膜疾患の1症例の資料(口腔内写真など)を提示し,読者にその診断名・治療方針を考えてもらう欄である.87the Quintessence. Vol.37 No.12/2018—2789症状が似ていたので,市販のビタミン剤を1週間服用したが,舌の疼痛には変化がなかった.2週間ぐらい前より食事の味がわかりにくくなり,食べ物を飲み込む際に疼痛を自覚するようになった.既往歴:子宮筋腫を指摘されており,不正出血や生理時の出血過多が以前より認められていた.全身状態:良好だが顔面は蒼白で,易疲労感を訴えていた.また,指の爪が上向きに反り返っていた.経口摂取は嚥下時痛のため困難であった.現症:意識は鮮明で体温36.5度,血圧,心拍数,呼吸には異常なかった.左右に口角炎を認め,舌乳頭は委縮し表面はつるっとした状態で,発赤していた(図1).刺激物により舌に疼痛が誘発され,強い嚥下時痛を認めた.他に口腔粘膜には偽膜や白苔,発赤や出血は見られない.患者:43歳,女性.主訴:舌の荒れ,疼痛.現病歴:3か月前より舌に荒れと違和感を自覚していたが,食事の問題がなかったので様子を見ていた.しかし,徐々に舌に発赤がみられるようなり,疼痛も強くなってきたため来院した.また,3か月前より頭痛や倦怠感(だるさ),疲れやすさ,食欲不振などの症状が認められていたという. 約1か月前より食事時に舌が醤油や香辛料にしみるようになった.以前からよくできていた口内炎と執筆・コーディネート:岩渕博史神奈川歯科大学歯学研究科顎顔面機能再建学講座顎顔面外科学分野連絡先:〒238‐8580 神奈川県横須賀市稲岡町82番地(最終回)第12回「舌が痛くて食べられない」答は次頁症例の概要Qこの病変に対する診断と治療方針は?図1 平滑舌および舌の発赤が見られる.

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