ザ・クインテッセンス 2019年3月号
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■材料の組成からみる接着材料の守備範囲(イボクラービバデント製品の場合)図1 イボクラービバデントの製品群を例に,それらの材料組成の観点からみた接着材料の守備範囲を示す.「モノボンドプラス」には,Siに必要なシランカップリング剤とZrに必要な10-MDPの両方が配合されており,セラミック材料の種類を選ばず使用可能である.10-MDPはセルフアドヒーシブセメントである「スピードセムプラス」やユニバーサルボンドである「アドヒースユニバーサル」にも配合されており,それぞれターゲットにしている被着体に用いられる.使用法で推奨されていないが,理論的には「アドヒースユニバーサル」もZrに接着する(図内Siはシリカ系セラミックス,Zrはジルコニアセラミックス,Caは歯質,Rはレジン). また,レジンセメントにおいても,今までは専用のプライマーシステムが付随し,各被着体ごとに別のボトルの処理剤が用意されていたが,現在では1つの処理剤で多様な被着体に応用可能な製品も数多く登場してきている.さらに,プライマーなどの処理を不要としたセルフアドヒーシブセメントが臨床で広く応用されているものの,その適用範囲や作用機序にあまり注意が払われていないのが現状である.ユニバーサルボンドとセルフアドヒーシブセメントは,材料学的な側面から検討すれば実は非常に近いコンセプトをもった製品群であり,その組成も近似した考えに由来している. 筆者は2017年2月号の本誌において『修復物,補綴装置の「装着」徹底解説』と題して,各種被着体側からみた適切な材料の選択法を検討した.本稿ではこれとは逆に,ボンドならびにセメント材料側から考えた適切な守備範囲を検討することで,読者諸氏の歯科接着に関する再整理のさらなる一助としていただきたいと考えている. まず,その一例としてイボクラービバデントのレジンセメント製品群ならびにユニバーサルボンドを材料組成の観点から整理してみると,図1のように表記することが可能である.すると,たとえば歯冠修復物用のプライマーである「モノボンドプラス」には,10-MDPとシランカップリング剤であるγ-MPTSが配合されており,ジルコニアセラミックスだけでなくCAD/CAMレジン冠やシリカ系セラミックスも処理可能であることがわかる.クリーニングやエッチングまでを考慮すると他にも理解すべき点は多くあるものの,各材料の守備範囲を大枠で理解するためには,歯面やジルコニアセラミックスに化学的反応を示すリン酸系機能性モノマー(10-MDP),およびシラン処理剤であるγ-MPTSが配合されているかを考え,それらをどう応用すれば安定した接着前処理が行えるのかを検討することが基本になる.:シランカップリング剤(γ-MPTS)Si:リン酸系モノマー(10-MDP)Ca:リン酸系モノマー(10-MDP)Zr:モノマーの濡れによる効果RイボクリーンZrクリーニングモノボンドエッチ&プライムSiクリーニング+エッチングスピードセムプラスアドヒースユニバーサルZrCaCaRモノボンドプラスSiZrγ-MPTS10-MDP33the Quintessence. Vol.38 No.3/2019—0529

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