ザ・クインテッセンス 2019年3月号
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子どもたちの健康と未来を考える歯科医療〜不正咬合の原因へのアプローチ〜はじめに 今,歯科界は大きなターニングポイントを迎えている.う蝕氾濫時代が過ぎて久しく,歯周治療・補綴治療は確立され,さらに欠損補綴の新たな手段としてのインプラントも出現した.口腔の健康は全身の健康といわれ,「予防」という概念が新たな常識として認知されるようになった. また,高齢者の口腔機能低下症や小児における口腔機能発達不全症という「機能」に対する継続管理も求められるようになり,歯科における「疾病」の概念が完全に変わってきている.口腔内の環境を見ることで子どもたちのネグレクトなどを早期に発見するという役割もある. メインテナンス患者を定期的に管理していくようになると,担当歯科衛生士が直接聞く訴えとして「歯がしみる,顎が痛い,違和感がある,歯が折れた,口臭が気になる,いびきが気になる,睡眠時無呼吸症といわれた(図1),よくむせる(誤嚥性肺炎の疑いがある)」など,う蝕や歯周病以外の問題で悩まされることになる.そして,そのような患者の口腔内には共通する状態がうかがわれる.「不正歯列,不正咬合」である(図2).機能が関与する構造的な口腔内の問題により力のコントロールがうまくいかず,さまざまなところに過剰な負担が生じ,トラブルを引き起こしているのである.また最近では子どもをもつお母さんの歯科に対する悩みとして,子どもが「口で呼吸している,歯ぎしりをする,いびきをかく,寝ている時に息が止まる,寝相が悪い,食べるのが遅い,くちゃくちゃ音を立てて食べる,姿勢が悪い,猫背である,唇が乾燥する,口臭がする,顎が小さい」などが挙げられるようになっている. 今,歯科界が診なくてはならない対象が変わりつつある.不正咬合の原因へのアプローチ1)不正咬合の原因とは? 不正咬合とは,「顎顔面,歯などが,何らかの原井上敬介*/関口一樹*1Child Health and its Future Centered Dental Care:An Approach for Underlying Cause of MalocclusionKeisuke Inoue, Kazuki Sekiguchiキーワード:不正咬合,筋機能療法,原因療法,小児矯正治療*愛知県開業 I Dental Clinic連絡先:〒479‐0831 愛知県常滑市錦町1‐22‐2*1埼玉県開業 関口歯科医院連絡先:〒330‐0071 埼玉県さいたま市浦和区上木崎5‐16‐1135the Quintessence. Vol.38 No.3/2019—0631

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