ザ・クインテッセンス 2019年4月号
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経験が浅くてもできる!噛める総義歯に導けるリマウント治療はじめに 高齢患者にとって食べることは大きな楽しみであり,命をつなぐ行為である.噛めない義歯が入ると,患者の食生活に大きな影響を与えるため,歯科医師の実力が問われる.しかし,義歯治療はテクニックが必要で,経験の浅い歯科医師は苦手意識を抱きやすい.だが,超高齢社会という現状に目をつぶることはできない. 2014年11月に「超高齢社会で求められる歯科とは」という題目の河原英雄先生(大分県開業)の講演会を拝聴し,自分の歯科医師としての志を大きく転換した.この講演では,義歯で苦労した多くの患者が食べたいものが噛めるようになり,本来の生活を取り戻し,患者の家族までもが笑顔になる,心のこもった医療が紹介され,これに魅了された. 義歯は思うようには噛めないもの,と限界を決めて治療をしていた自分が情けなかった.河原先生のような治療をしたいという思いを強く抱き,福岡で開催されている「前歯でも噛める入れ歯研究会」の門を叩いた(図1). 河原先生は,筆者のような経験不足の歯科医師も積極的にリマウント治療(義歯でセントリックを採り,半調節性咬合器にリマウント後,咬合接触しているところを調整してバランスドオクルージョンの咬合を与え,最後にフードテストを行って義歯を評価する治療)に取り組んでほしいと強く願われている.近い将来,高齢患者を支えていくのは,今若手の歯科医師である.食べたいものを何でも噛める義歯を目指していくことは,日本が抱える超高齢社会に大きな影響力を与えるはずである.本稿では,筆者のように経験が浅くても噛める総義歯に導けるリマウント治療について,動画も交えながら解説したい.義歯との向き合いかた 無歯顎患者の口腔を再構成する際は,印象・咬合採得など,押さえておかなければならないポイントがいくつもある.これまで迷いながら製作した義歯の評価は「入れ歯は痛くないですか?」「大丈夫です」須貝彩帆“Remount Treatment” for Complete Denture with Good Chewing AbilityAyaho Sugaiキーワード:高齢患者,義歯,リマウント治療,フードテスト神奈川県勤務 須貝歯科医院連絡先:〒212‐0016 神奈川県川崎市幸区南幸町2‐8 オーベル川崎101Movieスマホで動画が見られる!(使い方:P3参照)P150,151,154,155,157148the Quintessence. Vol.38 No.4/2019—0862

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