ザ・クインテッセンス 2019年4月号
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小児の口唇閉鎖力と舌圧の関係はじめに 近年小児歯科領域において,「噛む」「飲みこむ」「話す」など,子どもたちの口腔の機能について関心が高まっている.また日常の臨床についても,筋機能訓練や機能的矯正装置を用いた,患者のもつ潜在力を利用して顎の成長を治療目標に誘導する手法がとられるケースは多い.過去の報告では,口唇閉鎖機能や舌の運動が,顎顔面の発達に対し,多大なる影響を与えていることが報告されている1,2.時實3は,強度の鼻咽腔疾患(アレルギー性鼻炎や口蓋扁桃肥大)を有していたために口唇閉鎖力が低下し,その影響で上顎骨の旺盛な前方成長があったと報告している.山口は4,咬合異常の原因となる生活習慣に着目し,最大舌圧,嚥下時舌圧を測定し,それらが一般的な矯正力より遥かに高いことを報告している.また,舌癖のあるもののほうが,ないものに比べて大きいことを報告している. このような背景のなかで,口唇閉鎖力と舌運動の関連の検索は重要であり,また多方位にわたるより詳細な口唇閉鎖力測定が必要であるが報告はきわめて少ない.そこでわれわれは,正常咬合児と反対咬合児の舌の挙上運動と多方位口唇閉鎖力の関連について明らかにするため,検討を行ってきたので報告する5〜7.また,上顎前突児に関して,正常咬合児と比較してう蝕の発症と口唇閉鎖力の関係についても検索を行ったので併せて報告する.1.対象と測定方法1)対象 九州歯科大学附属病院,小児歯科を受診した8〜11歳の患児で,正常咬合児,反対咬合児,各15名を対象とした.固定式の矯正装置,可撤式の装置を使用している者,使用した経験のある者は対象から除いた.また,下顎を後方に誘導した際に切端咬合がとれない,著しい骨格性の反対咬合の者は対象から除外した.不正咬合の分類は図1に示すとおりである8.牧 憲司Relation of Lip Closure Force and Tongue Pressure in ChildrenKenshi Makiキーワード:口唇閉鎖力,舌圧,反対咬合九州歯科大学歯学部口腔機能発達学分野連絡先:〒803‐8580 福岡県北九州市小倉北区真鶴2‐6‐1158the Quintessence. Vol.38 No.4/2019—0872

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