ザ・クインテッセンス 2019年5月号
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増える高齢者の義歯製作に対応する!ゴシックアーチの有効的活用法はじめに 超高齢社会を迎えた現代の日本において,多数歯欠損をもつ高齢者の患者は多く存在し,今後もそれは増加すると思われることから,われわれ歯科医師には,その対応が求められている.多数歯欠損に至る原因を考えると,う蝕,歯周病,顎関節の位置異常など,さまざまな要因が考えられる.また,患者が一歯の欠損から多数歯欠損に至った経緯の違いは,患者ごとに個別性が高く,下顎位を採得する際の診断を困難なものにする. 現在も下顎位の採得方法についてさまざまな議論はされているが,その「ゴールドスタンダードはこれだ」という結論はでていない.しかしながら,無歯顎および多数歯欠損に対する補綴治療において,下顎位を決定しないと補綴装置の製作ができない.そのため,現在まで咬合採得方法には,さまざまな手法が考案され,実践されてきた. 本稿では,患者自身が能動的に動かすことが可能であり,下顎位の診断と咬合採得を同時に行うことができる“ゴシックアーチ描記法”の有効性を解説する.また,それを利用することにより患者(固有)の下顎位を決定した3症例を提示する.ゴシックアーチ描記法のメリットと評価を行う際の注意点 ゴシックアーチ描記法のメリットを図1に示す.これらを活かすことで,安定した結果を得ることができる. しかしながら,ゴシックアーチ描記法を用い,上下顎間関係の採得を行う際には,注意点がある.セッティングしたプレートとピンによる軌跡の評価が意味するところは,水平的な位置関係であって,ポッセルトフィギュアの一断面である.したがって,三次元的な評価のためには,垂直的な評価が必要である.そのため,垂直的位置関係を顔貌とセファログラム分析を用いて評価している.相宮秀俊Gothic Arch Tracing Technique for Denture Fabrication in Aged PopulationHidetoshi Aimiyaキーワード:ゴシックアーチ描記法,下顎位,咬合採得愛知県開業 吹上みなみ歯科連絡先:〒466‐0003 愛知県名古屋市昭和区曙町2‐7‐1120the Quintessence. Vol.38 No.5/2019—1060

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