ザ・クインテッセンス 2019年5月号
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歯科的既往歴:若い頃より,むし歯の治療を繰り返していた.₇₅の抜歯時期は10年以上前だと思うが不明.₅₆₇は10年前に歯根破折にて抜歯し,₆は数年前に脱離したまま放置していた.全身的既往歴:高血圧(降圧剤服用)治療計画 治療計画として,①インプラント治療,矯正治療,補綴治療を含む咬合再構成,②パーシャルデンチャーの2つの案を提示したところ,患者は外科処置に対して極度の恐怖感をもっており,さらに矯正治療に関しても,治療期間および治療中の審美性の問題から①は受け入れられなかった.そこで,パーシャルデンチャーでの対応を余儀なくされるが,遊離端欠損に対する処置としてパーシャルデンチャーでは「減少した咬合支持の回復」という目的は十分には果たせない. そこで,遊離端欠損の遠心側にインプラントを1本だけ埋入し,「義歯の沈下防止(=支持)」の役割を求める,インプラントサポーテッド・パーシャルデはじめに 欠損補綴には「インプラント」「ブリッジ」「パーシャルデンチャー」の3通りの方法がある.どの方法で補綴するにせよ,欠損に至った理由を熟考し,その根本原因に対してアプローチしなければ,高い予知性は見込めないと考える.また,“欠損の歯種”や“欠損の状態”などによって,予後は大きく左右されるため,欠損歯列には特有の“病態診断”が必要である. 本稿では,片側遊離端欠損症例に対しインプラントサポーテッド・パーシャルデンチャーによって対応した症例を提示し,“欠損歯列の病態診断”と“欠損補綴の設計”について考察したい.患者情報初診日:2013年10月.65歳,女性,主婦主訴:₅₄が欠けた,痛い,しみる.口腔内を放置していたので全体的に治したい(図1,2).New Essence:the Debut若手歯科医師・投稿欄 本欄ではエビデンスに基づいた患者本位の医療,最小の侵襲で最大の効果を得るという考え方に則った治療に重点を置き,患者のための真の医療とは何かを明らかにしていく.片側遊離端欠損に対する病態診断と補綴設計の考察井上 謙キーワード: 片側遊離端欠損,欠損歯列の病態診断,補綴設計, インプラントサポーテッド・パーシャルデンチャーConsideration of Pathological Diagnosis and Restorative Design for Unilateral Free-end Edentulous AreaKen Inoue 2004年徳島大学歯学部卒業.臨床経験15年,開業10年.包括的な視点から診断と治療を行い,必要に応じてルーペやマイクロスコープなどを用い,“精密な歯科治療”を行うことを心がけている.よりいっそう精度を上げていくとともに,臨床を通じて「人間力」も磨いていきたいと考えている.岡山県開業 I DENTAL CLINIC連絡先:〒700‐0835 岡山県岡山市北区東中央町1‐15‐101148the Quintessence. Vol.38 No.5/2019—1088

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