ザ・クインテッセンス 2019年6月号
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これでわかる,対応できる       の診査と治療54the Quintessence. Vol.38 No.6/2019—1208Diagnosis and Treatment of XerostomiaKayoko Ito, Saori Funayama, Makoto Inoueキーワード:口腔乾燥症,唾液,保湿剤,漢方薬*新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科*1新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野代表連絡先:*〒951‐8520 新潟県新潟市中央区旭町通一番町754番地伊藤加代子*/船山さおり*/井上 誠*,*1 口腔乾燥症患者の訴えは,「口が乾く」「舌がはりついて話しにくい」「水分がない食べ物は,水で流し込まないと食べることができない」「舌がヒリヒリする」「口の中がねばつく」「口臭がするような気がする」など多岐にわたる.これらの不快感が,食欲低下,人との会食など交わりを避けることや鬱状態につながり,QOLを著しく低下させてしまうことも多々ある.歯科医学的にみると,唾液分泌の低下は,う蝕や歯周疾患のリスクとなるだけでなく,口腔カンジダ症や味覚障害,義歯不適合の原因となる可能性もある(図1). 口腔乾燥症の罹患率は12〜39%であると報告されている1.また,施設入所者では60%であるという報告もある2.口腔乾燥症の専門外来受診者についてみると,2010〜2016年に新潟大学医歯学総合病院くちのかわき外来を受診した患者の79%が女性であり,大半は60歳代以降であった.高齢者のなかには,唾液分泌量が低下しているにもかかわらず,乾燥を感じていないケースもあるため,歯科治療時に乾燥の有無に留意することも重要である.そこで本稿では,歯科医院で可能な口腔乾燥症の検査や診断,治療について概説する.特 集 2はじめに

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