ザ・クインテッセンス 2019年6月号
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GUEST EDITORIALはじめに:増え続ける児童虐待 今年1月,千葉県野田市で,10歳の女の子が虐待によって命を落とすという痛ましい事件が起きた.学校や児童相談所の対応にはいくつもの問題点があったことが指摘されており,適切な対応ができていれば防ぐことができたかもしれない事件であるだけに,やりきれない思いが拭えない. この件を担当していた児童相談所の所長は,記者会見の際,「体に傷がなかったので,虐待を受けてはいないと判断した」旨のコメントを残している.しかし,児童虐待は体に傷が付くものばかりではない.児童虐待は,身体的虐待,心理的虐待,性的虐待,ネグレクトの4つに分けられ,このうち心理的虐待とネグレクトは体に傷がつかない虐待である.児童虐待に携わる仕事に就く方があのような認識しかもっていないということは,大変な問題である. 児童相談所の相談対応件数は増加の一途を辿っており,児童虐待防止法が成立した平成12年度には17,725件だったものが,平成29年度には133,778件と,約7.5倍になっている(図1).その内訳は,身体的虐待が33,223件(24.8%),ネグレクトが26,818件(20.0%),性的虐待が1,540件(1.2%),心理的虐待が72,197件(54.0%)であり(図2),体に傷がつかない虐待が全体の半数以上を占めている. これは,あくまでも児童相談所に相談があった件数であり,見えない児童虐待の早期発見に歯科の力を!歯科医療が日本を変える桜井 充参議院議員・医師連絡先:〒100‐8962 東京都千代田区永田町2‐1‐1 参議院議員会館512号室キーワード:児童虐待の早期発見,体に傷のない虐待の増加,被虐待児のう歯・未処置歯所有率,歯科健診制度の整備児童虐待相談件数の推移図1 児童虐待の相談件数は増加の一途を辿っている.約7.5倍140,000120,000100,00080,00060,00040,00020,0000(件)出典:厚生労働省資料より桜井充事務所作成児童虐待相談件数平成12年度平成13年度平成14年度平成15年度平成16年度平成17年度平成18年度平成19年度平成20年度平成21年度平成22年度平成23年度平成24年度平成25年度平成26年度平成27年度平成28年度平成29年度(速報値)29the Quintessence. Vol.38 No.6/2019—1183

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