ザ・クインテッセンス 2019年7月号
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“包括的矯正歯科治療”へのいざない新隔月連載(全6回)122the Quintessence. Vol.38 No.7/2019—1486東京都開業 AQUA 日本橋 DENTAL CLINIC連絡先:〒103‐0022 東京都中央区日本橋室町2‐4‐1‐4F綿引淳一“包括的矯正歯科治療”とは?第1回はじめに 近年,臨床の現場では,不正咬合と歯科疾患の発生,さらに口腔メインテナンス管理において,学術的な強いエビデンスは未だ明確でないものの,明らかに関連性があると考えられる症例は多い. また,患者のデンタルIQの向上から多くの成人患者が矯正歯科治療を求めている.しかし,成人患者には歯周病,欠損歯の存在,補綴歯の存在など,歯科的問題が山積みしている.さらに,従来はインプラント補綴治療に傾倒していた包括的歯科治療においても,マイクロスコープ,CBCTの普及により,歯周組織再生療法や根管治療の成績が飛躍的に向上し,“できるだけ天然歯を残す治療”がいっそう求められるようになってきた.その背景から,tooth positionを変更できる矯正歯科治療への期待と注目は,必然的な流れであると考えられる. しかし,矯正歯科治療と歯周治療をはじめ,歯内療法や補綴治療を矯正歯科治療とどのように組み合わせていくことが最適かに関しては,世界的にコンセンサスが得られていないばかりか,学術論文すら十分に報告されていないのが現状である.一方,歯周組織再生療法と矯正移動のように,最適化された各専門分野は,互いのもつポテンシャルを大きく引き出す可能性も示唆されている. そこで,本連載においては,本分野を新たな歯科専門分野として“包括的矯正歯科治療”と定義し(図1),現在報告されている文献について,成人矯正歯科治療を中心に整理し,筆者の考える臨床的留意点を新たな視点から考察したいと思う.矯正歯科学の本質を理解しよう 包括的矯正治療の話に入る前に,まず理解してもらいたいのが矯正歯科学の本質である.矯正歯科治療には,歯科医師,患者の双方において多くの誤解が存在する.そこで,包括的矯正治療を発展・成功に導くためには,読者の先生方が抱く矯正歯科学に関する誤解と疑念を解消しなければならない.

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