ザ・クインテッセンス 2019年8月号
4/8

漂白前漂白6か月後漂白前漂白3週間後漂白前漂白4週間後漂白前漂白4週間後 ブリーチのレシピを55the Quintessence. Vol.38 No.8/2019—1637考えもせず,医局の先輩から教えてもらった方法でウォーキングブリーチを行っていた.その後,自分なりに少し修正を加えはしたものの,基本的な部分は当初より教わった方法で続けていた. ここ数年来,歯科医師となる以前は土木技術者であったという経歴を活かし,MTAについていろいろと発表する機会に恵まれている.MTAを用いるうえで考えるべき事柄について,論文を検索しつつ考察を行っているが,そのひとつに歯質変色という問題がある. MTAによる歯質変色の発生メカニズムや対処法を調べていくうえで,ある論文に目が留まった.それは,外傷歯へのMTAでの直接覆髄後の歯冠黒変に対し,MTA除去とウォーキングブリーチを行ったという症例報告であった1.MTA除去後,髄腔内に漂白剤を留置したとのことであったが,そこで用いられた漂白剤が「過ホウ酸ナトリウムと生理食塩水の混合物」となっており,思わず「えっ?」と二度見した.筆者が教わったのは,「過ホウ酸ナトリウムと30%過酸化水素水の混合物」であり,ずっとそれが正しい方法だと思っていたからである.さらに, 日本では,ウォーキングブリーチに用いる漂白剤として薬事承認された製品は販売されていない.そのため,ウォーキングブリーチを行う場合は自費診療となり,その後の修復処置も保険適用外となることを注意していただきたい.また,患者には,薬事承認されていない薬剤の使用,ウォーキングブリーチのリスクや効果についての十分なインフォームドコンセントを行い,承諾を得ることが必要であることも申し添えておく.【本稿の留意点】

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る