ザ・クインテッセンス 2019年8月号
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73the Quintessence. Vol.38 No.8/2019—1655多くの臨床家に共通するところではないかと考える.ただし,「歯並びが良い」「よく噛めている」すなわち,もう少し大きく括るなら「咬合が良い」という状態については,さまざまな臨床的見解やそれを指し示す指標が多く存在している一方で,それについての統一的な基準や,明確なエビデンスはいまだ存在しないのも事実である.上記咬合理論では,一連の顎運動を含めた顎口腔系の機構を,硬組織,軟組織それぞれの構造物が互いに相関しあう複合体と捉える.通常,歯列は必ずしも骨格に対して整直せず,歯牙咬頭嵌合位に適応する形で骨格は閉口するが,頭蓋全体の構造に対して,歯列が整直して配され,骨格による閉口位と歯の咬頭嵌合位の一致を図ることができれば,咬合を構成する上記各構造物間に,ある統合性が現れると考える.その状態は,生体に本来備わるべき機能性と審美性の達成につながり,それは患者にとって「安全な咬合」となる可能性があると,教えていただいた. 本稿においては,上記「安全な咬合」という考えについての,筆者なりの解釈と基準を示し,それに基づいて行った症例の供覧により,咬合治療に関する「一考察」について述べさせていただく.なお,概念的な部分は筆者自身の作図にて解説を行う.危ない?安全?

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