ザ・クインテッセンス 2019年8月号
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110the Quintessence. Vol.38 No.8/2019—1692Clinical Dental Practice Based on the Midsagittal PlanePart2. Practice in Prosthodontics using SHILLA SYSTEMHiroshi Funaki, Akira Yoshino, Akihisa Kamikawa, Haruhiko Abeキーワード:正中矢状面,フェイスボウトランスファー,GoA採得,咀嚼機能検査,咬合平面*東京都開業 日比谷歯科医院*1東京都開業 吉野デンタルクリニック*2東京都開業 上川歯科医院*3宮城県開業 阿部晴彦歯科診療所*代表連絡先:〒121‐0011 東京都足立区中央本町5‐7‐17船木 弘*/吉野 晃*1/上川明久*2/阿部晴彦*3はじめに われわれ歯科医師は患者に対して,修復補綴治療,歯周治療やインプラントなども含む外科治療,歯列矯正から予防まで多岐にわたる歯科治療を行っている.そのなかでも補綴治療は第一の目的として補綴装置を装着することにより,崩壊した歯質や喪失した歯が元あった形態を回復,あるいは改善し,低下した咀嚼機能を向上させ,障害された外観を回復させる,ということにある1.いわゆるオーラルリハビリテーションといわれ,失われた口腔機能を回復するという重要な役割をもつ. 補綴治療を行う場合,われわれは義歯やインプラント,クラウン・ブリッジなどの補綴装置を用いることにより口腔機能回復を達成するが,補綴治療は間接法となるため,その治療過程においては咬合器を用いることが多いと思われる.では,その咬合器の使用目的とは何だろうか? さまざまな考え方があると思うが,筆者らが考える咬合器の使用目的は「咬合治療における基準が必要なため」と考えている.われわれが咬合再構成を行う患者の多くは,歯の挺出や傾斜など病的な歯の移動により咬合平面に乱れが生じていたり,側頭骨にも歪なりが起こり,外耳道の高さの左右差など顔貌所見にもその影響が多く認められる.そのような患者に対して,新たに咬合平面を決定することは容易ではないと考えられ,その咬合平面の基準を具現化し可視化する道具がフェイスボウおよび咬合器であると考えている. そのためには,一般的に上下顎の空間的位置関係を咬合器に模写するためにフェイスボウトランスファーを応用するが,従来のいわゆる外耳道を用いたterminal hinge axis(以下,THA)を後方基準点とするフェイスボウの場合,咬合器において左右対称の基準となる顔貌の正中矢状面が消失し,左右同高を示さないことはよく知られた事実である.1.咬合平面決定の基準について 咬合再構成や義歯製作をする場合の咬合平面はど

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