ザ・クインテッセンス 2019年9月号
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VERIFICATION第3回(最終回) 臨床例の検討とアブフラクション仮説の臨床的問題点NCCLの臨床的検証一時点および局所的な情報だけで診断していませんか?5年前に行った充填の歯肉側に新たなくさび状のNCCLが発生,原因は何か?144the Quintessence. Vol.38 No.9/2019—1960NCCL Update 2019─Clinical Verication of NCCLsToshifumi Kuroeキーワード:NCCL,アブフラクション,摩耗,酸蝕,咬耗,tooth wear山形県開業 黒江歯科医院連絡先:〒992‐0472 山形県南陽市宮内3577黒江敏史はじめに アブフラクションという用語が世にでて30年近く経過したが,2019年までに蓄積した知見からは,アブフラクションはいまだに実証されていないという結論になることを前2回で示した.これらはけっして筆者の個人的見解ではなく,主要な歯科雑誌に掲載されたNCCL/アブフラクションに関する文献レビューの結論と一致している1~7.しかし,これらのレビューではアブフラクションの否定で止まっており,代案は提示されていない.そのため,アブフラクションとみなされてきたNCCLをどうとらえるべきかは,われわれ自身で考えなければならない.前2回の内容を整理するため,NCCLの各病因に関する知見を表1にまとめる. これらをふまえると,アブフラクションの登場で相対的に軽視されるようになった摩耗を再評価する必要があるというのが筆者の解釈である.また酸の影響が強いとerosive tooth wearの特徴が強くでてしまうため,NCCLができるには酸の関与が大きくないことが前提条件になると考えられる.アブフラクションは原因と結果の部位が離れているという他の硬組織疾患とは大きく異なるメカニズムが想定さ

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