ザ・クインテッセンス 2019年10月号
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85the Quintessence. Vol.38 No.10/2019—2139 小児歯科の日常臨床において,子どもたちの歯列・咬合異常への対応は大変重要な部分を占めているが,これらの対応の基本は歯の萌出現象を利用するものといっても過言ではない.歯の萌出の調査研究で世界的に有名な小児歯科医モーリー・マスラー博士は「歯の萌出とは,発生部位から機能する位置まで,顎骨の中で起こる歯の生理的な移動である」と述べている. 成長発育期の包括的な口腔管理では,機能的かつ審美的な永久歯列・咬合の完成が目標となるが,そこに至る道のりは必ずしも平坦なものではない.と 小児の口腔管理のなかで,永久歯がなかなか萌出しない状況に対して「萌出遅延」や「埋伏」と表現することがあるが,萌出にかかわるすべての問題は,総じて「萌出障害」という言葉で表現される.そして,萌出障害は「時期の異常」と「位置および量の異常」に分けることができる. 萌出遅延は,萌出時期の異常に分類され,さまざくに永久歯の場合,「萌出障害」という言葉どおり,機能的に咬合するまでの長期間の萌出プロセスのなかでは幾多の障害が待ち構えていることがある.もちろん,注意深い経過観察つまりモニタリングのみで無事に萌出することがほとんどであるが,なかには埋伏歯となり,隣在歯の歯根吸収をきたすなどして,将来の咬合育成に大きく影響することもある. 前編では,“責任ある小児歯科医療の1つ”である萌出障害への対応を行うにあたっての基本的な視点と注意点として,永久歯の萌出遅延から埋伏における各種対応について述べる.まな理由によって正常な萌出時期から時間的に逸脱した遅延を示すものである.同じ萌出時期の異常に分類されるものとして,早期萌出,乳歯の早期脱落などがある.一方,埋伏は異所萌出,移転,アンキローシスなどとともに萌出位置・量の異常のなかに分類される(図1).はじめに1.萌出障害の分類萌出障害の分類と萌出遅延および埋伏の位置づけ萌出障害萌出時期の異常・萌出遅延・早期萌出・乳歯の早期脱落 など萌出位置・量の異常・埋伏・異所萌出・移転・アンキローシス など図1 萌出障害は,「時期の異常」と「位置および量の異常」に分けることができる.

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