ザ・クインテッセンス 2019年10月号
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無歯顎補綴の治療戦略新連載114the Quintessence. Vol.38 No.10/2019—2168吉松繁人*/奥野幾久*1 現在日本は超高齢社会であり,2025年には3人に1人が65歳以上となり,4人に1人が75歳以上となる2025年問題が待ち構えている.医療費も2012年の35.1兆円から1.5倍の54兆円に,介護費も8.1兆円から2.4倍の19.8兆円になると推測されている.また,われわれを取り巻く医療も大きな転換期を迎えている.インプラントや再生医療などの先進医療が進歩し続けている一方で,超高齢者に対する医療の現場では,先進医療の意義や価値が問われはじめている. また,図1に示すように歯科技工士,歯科衛生士などのコデンタルスタッフの高齢化も進んでおり,補綴装置の供給や患者のメインテナンスなど,将来的に満足できる医療提供ができなくなる恐れがある1.近い未来,われわれは,欠損補綴の考え方,あるいは医療提供のあり方を真摯に考え,無歯顎患者のQOLに貢献する技術の取得に取り組まなければならない. さて,臨床ではオーラルフレイルの概念やエアウェイの改善など,従来の補綴治療の考え方だけでは対応できない機能回復や治療結果が求められる時代となっている2.生理学的な機能回復には,従来の咬合再構成の概念だけでは対応できず,患者が本来もつ機能を再現するために骨格性不正咬合を含むフェイシャルパターンを分析し,筋骨格系,神経筋機構へアプローチする必要がある.これらの問題は,インプラントやME機器を用いることですみやかに改善することができるようになった3〜5.われわれは,義歯・ボーンアンカードブリッジ(以下,BAB),およびインプラントオーバーデンチャー(以下,IOD)など,さまざまな治療オプションを患者と補綴装置製作の両面から検討して選択する必要がある(図2). しかし,一方でインプラントコンプリケーションの報告も多数目にするようになってきた.補綴装置連載のはじめに*福岡県開業 吉松歯科医院*連絡先:〒839‐0814 福岡県久留米市山川追分2‐6‐38*1大阪府開業 奥野歯科医院*1連絡先:〒530‐0003 大阪府大阪市北区堂島1‐2‐5 堂北ダイビル1F第1回 プロローグ:多様化する治療計画

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