ザ・クインテッセンス 2019年11月号
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69the Quintessence. Vol.38 No.11/2019—2365 不正咬合を対象としている矯正歯科専門医の日常臨床において,萌出障害や永久歯埋伏は,比較的高頻度に遭遇する症状である.小児歯科医と比較して矯正歯科専門医はその対象年齢の違いから,萌出障害よりも埋伏歯という言葉のほうを日常的に使用しているように感じる.そもそも,萌出障害と埋伏歯を明確に定義したものは見当たらず,主なものとして,Noda1は,萌出障害を「何らかの原因で歯が正常に萌出しないもので,次の2つに大きく分けられる.①萌出時期の異常:萌出遅延・埋伏,②萌出方向の異常:異所萌出・埋伏」と定義している.一方,井上2は,埋伏歯について「歯の形,位置,歯軸,方向,萌出余地などの観点から正常な萌出期に至るも萌出しない歯を埋伏歯という」と定義しており,他方では歯根の完成,未完成で区別しているものもあり,双方ほぼ同じで一連の事象のようにも考えられる.いずれにしても,永久歯列の完成にはすべての歯の萌出の完了が必須であり,いずれかの歯 萌出障害(埋伏歯)は,どれくらいの頻度で生じるのであろうか? 萌出障害や埋伏歯の臨床統計については,それぞれ小児歯科,矯正歯科,口腔外科などからの報告が認められる.小児歯科領域1,3,4では,歯種別では上顎中切歯の頻度が高く,次いで上顎犬歯となり,それぞれおよそ40%,15%と報告されている.これが矯正歯科領域5,6からでは逆転し, 萌出障害の原因には,全身的要因によるものと局所的要因によるものとがある.全身的なものは多数が咬合線に達していない状況は,口腔領域の健全な成育と健康の維持を目的とした場合の大きな問題といえよう. 本シリーズは,埋伏歯の予防と治療について前編を小児歯科専門医が,後編を矯正歯科専門医がそれぞれの立場で執筆している.そのため,患者のライフステージの違いからか小児歯科医は埋伏に至る前の萌出障害を予防的な観点から考察した.矯正歯科医が担当する本編では,萌出障害の結果,発見が遅れた,あるいは残念ながら予防処置が奏功せず埋伏に至ってしまったケースをどのように治療していくかについて考察したいと思う. すべての歯科医師にとって,萌出障害または埋伏歯に関しては,自身で対応するか否かにかかわらず,その予防や治療法についての知識を身に付けることは重要である.これまで諦めていた症例に関しても,医療連携という方法によって解決するということも含め,読み進めていただければ幸いである.上顎犬歯,上顎中切歯の順となり,それぞれおよそ15%,35%と報告されている.また,共通して下顎より上顎のほうが圧倒的に高頻度である.受診年齢の違いによるところも多いが,矯正医にかかるときには上顎中切歯の頻度が減少しているとすると,かかりつけ医や小児歯科医が早期に発見し,予防的に対応してくれている結果かもしれない.歯萌出障害の原因になることが多く,1歯〜数歯の萌出障害には局所的な原因が関与している.発現頻はじめに1.萌出障害(埋伏歯)の分類2.萌出障害の原因

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