ザ・クインテッセンス 2019年11月号
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無歯顎補綴の治療戦略148the Quintessence. Vol.38 No.11/2019—2444奥野幾久*/吉松繁人*1 連載第1回では,多様化する治療計画として,近年の超高齢化とこれを取り巻く歯科医療環境の変化から,患者の背景に応じた治療戦略と治療ゴール設定が必要であり,そこには骨格性不正咬合と顎機能不全が深くかかわっている可能性を述べた.無歯顎補綴治療においては,完全な治癒を期待するのではなく,変わりゆく生体の変化に追随しながらリハビリテーションの概念で治療を行うことがきわめて重 これまでわれわれは歯学教育のなかで,無歯顎患者に対する治療法として標準的な総義歯製作法を学び,これを基本として臨床の場で実践してきた.テキストには過去の膨大な研究から成る裏づけと,多くの臨床家によって培われたさまざまな経験が凝集要であり,これを達成するためにわれわれは1つの決まった治療法だけを提供するのではなく,状況に応じていくつかの治療オプションを提示する必要がある.本来それは科学的根拠に裏づけられた再現性のある方法であるべきだが,日常臨床の場ではすべてがそうならないことも現実である.今回は無歯顎治療に潜むドグマを掘り下げてみたい.されている.標準型を知ることはきわめて重要であり,一見して難症例と思われる症例においても,まずは基本に則した総義歯を製作し,これでうまくいかないのはなぜかと思案するのは正しい順番であると考えている1.しかし,日常臨床の場においてははじめに1.うまくいく症例とうまくいかない症例*大阪府開業 奥野歯科医院*連絡先:〒530‐0003 大阪府大阪市北区堂島1‐2‐5 堂北ダイビル1F*1福岡県開業 吉松歯科医院*1連絡先:〒839‐0814 福岡県久留米市山川追分2‐6‐38第2回 無歯顎治療におけるドグマを探る

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