ザ・クインテッセンス 2019年12月号
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無歯顎補綴の治療戦略152the Quintessence. Vol.38 No.12/2019—2686 無歯顎治療においてもっとも重要なステップは,下顎位の決定であろう.われわれは咬合治療の出発点を顎関節における下顎頭位を中心位に求め,咬合接触点の与え方やさまざまな咬合接触様式で下顎位を安定させようとしてきた.しかしながら,中心位の定義も時代とともに変化し,治療のゴールが非常に曖昧となっている.また,バウチャーの 下顎位は,「上下の歯の位置関係から表現する場合の咬合位」「下顎頭の位置を表現する場合の下顎頭位(顆頭位)」「神経筋系によって規定される場合の筋肉位」に分かれている(図1a,b).咬合位に含まれるものが咬頭嵌合位,下顎頭位には中心位,顆頭安定位などがあり,神経筋系に関連するものが下顎安静prosthodontic treatment for edentulous patientsの変遷1にあるように,適切な手技はいまだに確立していないため,その拠り所をゴシックアーチなどに求めているのが現状であろう2. 今回は,生理学的な下顎位を再現するための咬合再構成に必要な知識と評価について整理してみたい.位,筋肉位などである.これらの定義について,以下に示す.1)顎関節によって規定される下顎頭位①中心位 初期の中心位は下顎頭を関節窩の後壁に強く押しはじめに1.下顎位の概念第3回 下顎位と咬合採得吉松繁人*/奥野幾久*1*福岡県開業 吉松歯科医院*連絡先:〒839‐0814 福岡県久留米市山川追分2‐6‐38*1大阪府開業 奥野歯科医院*1連絡先:〒530‐0003 大阪府大阪市北区堂島1‐2‐5 堂北ダイビル1F

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