ザ・クインテッセンス 2020年2月号
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はじめに 日本では昔からタバコといえば,刻んだタバコの葉を紙で細長く巻いた紙巻きタバコであった.喫煙の健康影響についての知識の普及や喫煙場所の制限などを背景として,わが国の紙巻きタバコの販売本数は年々減少し,1990年の3,220億本から2018年の1,300億本にまで減少した1.こうした状況のなか,2014年に世界に先駆けて,新型タバコの1つである加熱式タバコの販売が日本で開始された.タバコ市場に新しく登場したこの加熱式タバコは,その後急速にシェアを伸ばしており,日本国内のタバコ総市場に占める割合は,2020年には30%を超えるとの試算もある.最近ではメディアにも多く取り上げられ,新製品もぞくぞくと投入されている. 新型タバコが話題を集めているいま,歯科の患者から新型タバコについての質問を受ける可能性は十分にある.紙巻きタバコの影響はすでに科学的に明らかとなっているが,新型タバコの健康影響についてはまだ情報が不足しており,また誤解も多い.本稿では,新型タバコと現段階でわかっている全身や口腔に対するその影響について解説する.1.新型タバコとは1)新型タバコの仕組みと構造(図1)および外観(図2) 新型タバコは,大きく分けて「電子タバコ」と「加熱式タバコ」との2つに分かれる(表1).紙巻きタバコと異なり,どちらも火を使わず,タバコ葉を燃焼させない(ただし,加熱式タバコは燃焼がまったくないわけではないとの指摘がある).電子タバコは海外では広く流通しており,使用による死者も出ている.一方,加熱式タバコは日本での販売が世界中でもっとも多い2. 電子タバコは,紙巻タバコに似せた筒やペンシルに収められた液体(e-リキッド)を,電気的に加熱して発生させたエアロゾル(液体の微小な粒子とガスの混合物で霧状のもの,水蒸気とは異なる)を吸引する.小島美樹Health Consequences of New Tabacco ProductsMiki Ojimaキーワード:加熱式タバコ,電子タバコ,エアロゾル,ニコチン梅花女子大学看護保健学部口腔保健学科連絡先:〒567‐8578 大阪府茨木市宿之庄2‐19‐5歯科医師も知っておきたい新型タバコの全身および口腔への影響142the Quintessence. Vol.39 No.2/2020—0412

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