ザ・クインテッセンス 2020年3月号
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その下顎位は大丈夫?―下顎位不安定の要因と見極めを考える―70the Quintessence. Vol.39 No.3/2020—0610特 集 2はじめに 下顎位や咬合に関しては,それほど関心がなくても臨床的に困ることは少ないかもしれない.しかし,安定しない咬合採得や咬合関連の不定愁訴に悩まされる経験は,誰でももっているのではなかろうか. 咬合論に関しては,歯科学の黎明期から現在までの間,さまざまな説が議論されているものの,科学的根拠で示されるような決定的な正論は少ないといわれている1.また,下顎位の基準位の1つである中心位の定義も,しばらくは7つの定義が併記されて混沌としていたため,若手歯科医師においては咬合や下顎位に対する興味をもちにくかったように感じる. 歯科臨床は,歯科医学すべてを含んだ総合的な医療である.歯科医師として患者を目の前にして治療を行うのであれば,咬合や下顎位を把握し,診断できる方法をもつべきであろう.また,臨床を積み重ねていくと,咬合によるトラブルも数多く経験するようになる.このようなリスクのある患者を見抜き,下顎位を意識し,記録し,経過観察していく必要性は高いと考えている. そこで,とくに若手歯科医師への問題提起を兼ねて,下顎位に対する理解を深めていただくために,原因が異なる下顎位が不安定な症例への対応と経過を提示し,その経過から下顎位不安定の要因と注意すべきポイントを探っていきたい.Shinichi Kumagaiキーワード:下顎位,中心位,咬頭嵌合位,顆頭安定位静岡県開業 くまがい歯科クリニック連絡先:〒432‐8002 静岡県浜松市中区富塚町1864‐12‐1F熊谷真一Is that Mandibular Position Really Stable in the Long Term?:Discuss the Factor and the Assessment of Unstable Mandibular Position

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