ザ・クインテッセンス 2020年3月号
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フレイル予防の鍵は人とのつながり歯科診療所から社会的処方を!96the Quintessence. Vol.39 No.3/2020—0636特 集 3木村年秀The Key to Frailty Prevention is Social Capital:Make a Social Prescription from Dental Clinic !Toshihide Kimuraキーワード:フレイル予防,社会的処方,孤食,買い物支援まんのう町国民健康保険造田歯科診療所連絡先:〒766‐0201 香川県仲多度郡まんのう町造田1974‐1「先生,歯が悪いのに足がなくて診療所に行けん人が多いみたいやで!」 当地域の後期高齢者全員を対象とした「食べる楽しみ」に関するアンケート調査を民生委員の皆さんにお願いしていたところ,仲良しの民生委員長が歯科診療所に来られ,言い放った.そうか,歯医者にも,買い物にも行けない,そして外出困難による孤立など過疎地域の社会的問題が高齢者の低栄養の根本的な原因となっているのかもしれない.調査分析結果では,体重減少に影響しているのは「口腔機能の低下」と「食べる楽しみの喪失」.食べる楽しみの喪失にもっとも影響する要因は「食材調達困難」であった1. 高齢者が運転する車の事故が社会問題となっており,運転免許の自主返納が勧められているが,われわれの地域では自身や家族が自家用車を運転できなくなれば,福祉タクシーやデマンドタクシーを利用するようになる.しかし,これらは便数が少なく,使い勝手が悪いので利用する高齢者はわずか.通院や買い物のための移動手段の確保は過疎地域の大きな課題である(都市部でも同じだと思うが)2(図1).1.通院,買い物,孤立の問題は医療の力では太刀打ちできない “社会的処方”という言葉を聞いたことはあるだろうか? 「処方」といえば,抗生剤とか鎮痛剤とか,医科ではリハビリ,訪問看護の処方などがあるだろうが…….社会的処方とは,薬と同じように「社会とのつながり」を処方するということであり,プライマリ・ケアの分野では最近注目されている3.イギリスでは制度のなかに取り入られており4,なんと「孤独担当大臣(Minister for Loneliness)」が創設されたという.しかし,私たち歯科医師が「社会とのつながり」を処方するとは,どういうことであろうか? 「意味わからん!」という先生方も多いだろう. 高齢化が進展するなか,歯科においてもフレイルやオーラルフレイルへの対応が期待されている.咀嚼や嚥下など口腔機能へのアプローチをイメージす

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